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転生少女の履歴書  作者: 唐澤和希/鳥好きのピスタチオ
第2部 転生少女の青春期

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呪文の謎編④ チーラちゃんは可愛い

 今まで、アランが唱えたことがある短歌を口でつぶやくことはあったけれど、それはこの呪文を唱えると、こういう魔法効果があると知っているものだったから気軽に口に出せた。

 だから、どういう効果が発動する魔法なのか分からないものは口に出さなかった。 だって、どうなるのか知らないで、呪文唱えるとかなんとなく怖い。

 念のためだった。魔法は魔法使いが唱えないと意味がないものだという認識ではあったから……。どうせ唱えても、何もないだろうという思いもあって、口に出すことはなかった。

 けど、呪文の中にはロンネさんでも読めそうとおっしゃるものがある。つまりそれは、その呪文を口にすれば私でも発動しちゃう魔法なのかもしれない。そしてその魔法が、どういう効果をもたらすのか……それを確認するすべは、その呪文を唱えてみるぐらいしか、思いつかない。


 いや、正直ロンネさんに頑張ってもらって、唱えてもらおうかとかも考えたけれども……さすがに、どうなるか分からない呪文を唱えてもらうのは可哀想だし、それに、あんまりこの呪文のことは、まだ誰にも気づかれたくない。


 今回、発見してくれたのが呪文とかの知識がまったくないロンネさんだったから、ごまかせた。呪文というものが、“読みにくく見える”ということを知らないから。

 でも、クロードさんとかコウお母さんあたりは学校に通っていたのだし、私が読めるかどうか聞くものが、なんだか少し読みにくいと思った時に、呪文だと気づいてしまうかもしれない。

 商売人のクロードさんは利用してくるかもしれないし、コウお母さんは何か危険なことに手を出したんじゃって心配するかも……。

 それになにより、どうして私がこの、おそらく誰にも知られていない呪文を紙に書くことが出来るのか……を追求される。そこで前世の……なんて話しをしても信じられないだろうし、言いたくない。


 だから、やっぱり、自分で、唱えるしかない、と思う。

 こわい。だって、多分だけど、王族が、普通の人に図書館の魔法関係の本を見せないのもこの事実を秘密にしたいがためだろうし。だから、今、私が目の前の紙に書かれている呪文は、王族が隠したがる魔法、ということになる。


 けど、知りたい! 試したい! やってみたい!

 それに、前世だって、無謀と思えることをまず最初に試した人がいるからこそ、さらなる進化を遂げてきたわけだし……。納豆とか最初に食べた人って本当にすごいと私思う。


 とりあえず、最初に唱えようと思う呪文が、ロンネさんが一番に読みやすそうといった呪文。アランが言うには、読みやすい呪文は簡単な魔法の呪文のことが多いと聞いていたから……読みやすいならそんなに危険な効果のある魔法でない可能性があると踏んだのだ。


 でも、いざ、唱えるとなると超、超緊張する。


 私は誰もが寝静まった深夜。屋敷から抜け出して、馬を駆ってこの前アラン達ときた小さい湖のところまできた。

 万が一、ものすっごい危険な魔法だった場合に、周りの人に迷惑がかからないように。


 深呼吸で呼吸を整えて、私はその呪文を口にした。



「タマノオヨ タエナバタエネ ナガラヘバ シノブルコトノ ヨワリモゾスル」


 唱え終わった後、不思議な感覚があった。体の中がじんわり温かくなった気がする。そして、自分の体を見てみると、なんか、光ってる? いや、実際光ってるわけじゃないけどなんかオーラのようなものが自分の体を覆っているように見えた。


 やばい、コレが魔力マナという奴なのだろうか? あったかい。



 ……。



 うん、あったかい。


 ……。


 しかし、このあとどうすればいいのか全くさっぱり分からない。


 そして十数秒ぐらいして、私の体の回りを覆っていたオーラのようなものは見えなくなった。

 どうやら。これで呪文効果は終了らしい。


 ええ、一体何の呪文だったの!? まさかじんわり温かくなるだけの呪文とかじゃないよね?


 私は勢いに任せて、その後、ロンネさんが読めそうといったほかの呪文も唱えた。結果はさっきと一緒で十数秒生暖かいオーラに包まれて終わった。

 ちなみに、特に体に変化はない。たぶん。


 若干、呪文さえ唱えれば、不思議と次にやることが分かって、すんごい魔法を発動させられるんじゃないかって妄想していた。うん、でも、結局、そんな都合よくはいかないみたい。


 でも、今まで、アランが唱えていた呪文を口ずさむ時と違って、確かに、魔力っぽいものが見えた。そう、見えた!

 ということは、やっぱり……私達、魔法使いじゃない人でも使える魔法が何かしらあるんだ……。

 

 コレは国が隠そうとしている魔法? 何のために隠すのかも分からない。危険な魔法なのかもしれない。もしくは、魔法使いの立場を有利に立たせるためだけに隠している……とか?


 呪文を唱えると突然爆発するような、最悪の事態にはならなかったけれど、正直拍子抜けした。せめてどんな魔法なのかだけでも分かればよかったんだけど。……でも、私でも使える魔法がある説が濃厚になった。それだけでもよしとしよう。とりあえず突然爆発するような感じじゃないって分かったんだし、これから色々試していけばいいんだから。


-----------------------

 


「はあ、リョンリョンと私の女子会も今日で最後ですね」

 そう言って自分の口で『グスン!』という効果音をつけたロンネさんは、また私の部屋にきて、お茶を一服している。

 滞在中ちょくちょく、私の部屋へお茶を一服しにくるメイド……。いいの? コレでいいの? あとなんか、昔ながらの知り合いみたいな雰囲気出してくるけど、そうでもないよ!?


「ロンネさん、私にぶりっ子しても何も出ませんよ」

「ひどい、リョンリョン! 私としばらく会えなくて寂しくないんですかー? ロンロンないちゃいますー。エーン」

 とか言いつつ泣く気配のないロンネさんは優雅にお茶を飲む。


「でも、ロンネさんもしばらくしたら、クロード様と一緒に商会に戻るんですよね?」

「はい、多分。最近は、お酒の事業が忙しくて、あちこち色んなところ連れてかれるんです。まだ、ここでゆっくりしたかったですー」

 いや、君はここでゆっくりしすぎだと思うよ、うん。


 私は出発の荷物の中身なんかを確かめていると、コンコンとノックの音が聞こえてきた。


「リョウ? 準備終わったか?」

 アランの声だったので、入っていいですよーと声を掛けると、私の近くにいたロンネさんが、「アラン様かよ、やべ」みたいなことを言って立ち上がり、使用人風を装うのと同時に扉が開かれて、大きな荷物を背負ったアラン氏が現れた。


 お、おやおや? アラン、一体どうしたんだね? その荷物は……。

「あー、なんか、アラン、大きな荷物背負ってます……ね?」

 私が恐る恐る聞くと、アラン氏は、一つ頷いて、「俺も一緒にルビーフォルンへ行く!」といい始めた。


「アイリーン様には話してあるんですか?」

「お母様には言った。反対されたけど」

「反対されたんなら、駄目ですよね」

「いや、俺は行く」

「駄目です」

「なんでだよ。リョウは……俺と一緒に行くの嫌なのかよ」


 そういう問題じゃないよね!? 


「にいさまー! リョウさまー! チーラもっ! チーラもっ! いくーっ!!」

 そう言って、泣きべそかきながら、顔を真っ赤にしたチーラちゃんも私の部屋に駆け込んできた。


「チーラは駄目だ! 危ないだろ!」

「ヤダー! チーラもいぐんだもんー!」

 と言い合って、アランとチーラちゃんがにらみ合いっこしてる。兄妹喧嘩が始まりそうな勢いだ。

 レインフォレスト滞在中は、結構チーラちゃんと一緒に遊んだ。

 遊び相手がいて、興奮状態のチーラちゃんは毎日キャッキャキャッキャと楽しそうにしていた。周りにチーラちゃんぐらいの年頃の子もいないし、遊び相手がいなくなるかもって思って、寂しいのかも。

 アイリーンさんはそのうち話し相手を雇おうかしらとか言っていたけれど……。


 それにしてもアラン、『チーラは駄目だ』って言うのは、あたかも自分はOKみたいな感じだけど、アランも駄目だからね!


「どうせチーラは、すぐに家に帰りたくなって、泣き喚くに決まってる!」

「そんなことじないもんー。チーラもいぐんだもんー! もう用意はできでるもんー!」

 そう言って、チーラちゃんは、肩に下げたショルダータイプのカバンを持ち上げた。どうやらその中に、必要なものは入れてきてるらしい。


「一体何を持ってきたんだよ……」

 と言いながら、アランは、チーラちゃんのカバンの中身を確認するみたいで、カバンを開けると中からは、どんぐりが3個と、なんかつるっとした小石。あと、ハンカチとお菓子とぬいぐるみが入っていた。


「こんなの持ってきてどうするんだよ」

 と言いながらアランは、どんぐりやら石やらを手のひらに載せる。


「すごくきれいだったから拾ったの。ルビーポルンの人にあげるの!」

「木の実とか石なんかあげて喜ぶわけないだろ!」

「よ、よろごぶもん! この石、すっごくつるつるだもん!」

 そう言って、チーラちゃんは、アランの手にあるつるつるらしい石を掴み取って、大事そうに胸の前に抱え込んだ。かわいい。正直石はいらんけど、かわいい。


「まったく、そんな荷物でルビーフォルンにいけるわけないだろ。何日も馬車に乗って、行くんだからちゃんと準備しないとな」

 そう言って、アランは、自分が背負っているパンパンの大きいカバンを自慢げに妹に見せてきている。

 ほんと、すごい詰め込んでるよね。それ。私より荷物多くない?

 あんなにたくさん、一体何をルビーフォルンに持ち込もうというのか……。


「それに、チーラ、一緒にルビーフォルンに行くってなったら、何日も何日も、お母様やお父様に会えなくなるんだぞ。いいのか?」


「何日も会えないの? 明日も、その次の日も?」

 そうだぞという感じで重々しく頷く兄を見て、チーラちゃんは目に涙を溜めた。


「……何日も会えないのはいや」

「なら、チーラはここに残って、お母様やお父様と過ごすんだ」

「でも……にいさまやリョウさまともっと遊びたい」

「大丈夫だ、来年またリョウもくるし……な?」

 チーラちゃんは、グスンと鼻水をすすって頷いた。どうやら諦めてくれたようだ。

 ただ、アラン、勝手に来年も私のレインフォレスト行きを決めるのはちょっと……。

 でも、かわいいチーラちゃんのためだもんなー。なんか、ついていきたいのを我慢してるチーラちゃんのいじらしさがたまらない。


「にいさま、これ、ルビーポルンの人達に渡して、つるつるの石なの。贈り物」

「分かった。渡しておく」

 アランが、アランの癖に優しそうな顔でそう言って、チーラちゃんの頭を撫でた。チーラちゃんは、目に涙を溜めて、胸に抱えたつるつるの石をアランに渡す。


 なんていうか仲が良くて羨ましいなーって、いいなーって。

 うん、思うんだけどね。


「いや、アラン、ものすごく行く気になってるところ悪いんですけど、アイリーン様の許可がないんじゃアランも連れてけませんよ」

 それに突然だとこっちも困るし。


 私の無慈悲な宣告に、アランは『何でだー!』と嘆き悲しみ、その様子をみて、新しい遊びかと思ったらしいチーラちゃんが、アランのマネをして、『なんでだー』と言ってキャッキャしていた。



 うん、チーラちゃんは可愛い!





年末ですね!

今年は大変お世話になりました!

来年もどうぞよろしくお願いします。


本日の更新で年内は最後になります。

次回の更新は、年明けの3日か4日ぐらいの予定です。

また、最近地味に新作を上げました。

『家族転移! 異世界カードコレクターズ』というものです。

ある程度ストック作ってあるので、不備がなければ年末年始も予約投稿で毎日更新します。

お暇な時にでも気軽な気持ちで読んでいただけると幸いです。


皆様、よいお年を!

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― 新着の感想 ―
[良い点] チーラちゃんが笑顔になったので万事解決!! [気になる点] 魔法使い、精霊使いとは別の第三の魔法?じつはこれは魔力の育成魔法とかで誰でも魔法が使えるようになるとか?妄想が膨らむ〜
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