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姫はドラゴンに恋をする  作者: 楡葵
第1章
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教育係

翌朝。


今日は目覚めが悪い。

久しぶりにアルスの夢を見てしまったせいか、起きたら目は腫れているし、頰も濡れていた。


昨日の突然の結婚発表から、ナワルドへ出立するまで、1週間の猶予を貰った。

断るなど初めから選択肢に入っていなかった。

なので、それまでに気持ちを整理して、腹を括るつもりだ。


とりあえず、顔を洗ってスッキリしよう。

勢いよくベッドから起き上がる。


廊下を少し足早に急いでいると、角を曲がった所で、誰かにぶつかる。


驚いて閉じていた目を開ければ、サラより少し背の高い青年が、体を支えてくれていた。


まだ若いのに、身嗜みは貴族のように整っており、胸には立派な金の勲章がついている。


金色で少し癖のある髪、宝石のようなサファイアブルーの瞳はまるで王子様。そして、そのまま微笑んでくれたら、世界中の女性が溜め息を漏らすほど、整った顔立ちであるというのに。


どうしてこうも眉間に皺が寄るのか。




「姫様!廊下を走るなど、行儀がお悪いですよ。」

「あっ、ユーリ、えと…」


驚いて、うまく言葉が出てこない。

それに、こんな腫れた目を見られたらまた心配をかけてしまう。


俯いたままのサラを見て、教育係ははあ、と息をつく。


「また泣いていたんですか、全く。顔を上げなさい。」


フワ。

涙で濡れた頬をハンカチで拭ってくれる。

やはり角を曲がった瞬間からバレていた。

彼はサラのアルスへの想いをよくわかってくれている。


「ユーリ……いつもごめんなさい」

「謝るくらいなら泣かないでください」

「うう…….はい」


サラより3つ上のこの青年は、9歳という異例の若さで教育係に任命された、超優秀人物である。


サラはいつも怒られてばかりで、彼には頭が上がらない。

何度レッスンをふけようとしたことか。


「あなたは今、自分の事だけを考えなさい」


ユーリは厳しくて、優しい。


「ありがとう。少し顔を洗ってくるわ」


そう言ってサラは部屋に戻った。

足取りはさっきよりだいぶ軽くなっていた。


彼はもう、自分のことなど、忘れているかもしれない。

それでも、どこかで幸せに生きてくれているなら、それで十分だ。

2人だけの大切な時間は、この心の中で永遠に生き続ける。


自分も、次に進まなければならないのだ。

後ろばっかり向いてはいられない。


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