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遠い記憶
初めて会った時、彼はこう言った。
『やっと会えた、サラ』
サラより8歳年上の彼は物知りで、面倒見が良く、頼れる兄のような存在だった。
しかし、そんな時間はあっと言う間に終わりを告げる。
『サラ』
ある日、真剣な表情のアルスが待っていた。
『もうここへは来れない』
意味がわからない。
『アル?どうして?』
フワッと首に何かがかけられる。
『代わりにこれが君を守る』
見てみれば、小さな水晶のネックレス。
中には、アリアの花びらが入っている。
『アル…….もう会えないの?』
返事がない。
ふと顔を上げると、目の前にもう彼はいなかった。
なんだか胸がざわついた。
それから、アルスはこの国からいなくなった。
アルスがいなくなってから、6年が経ち、サラは本日16歳となった。