シュタットおじさん
サラが7歳の頃。
『おじさんこんにちは!』
『やあ、サラちゃん』
もじゃもじゃの白ひげの、サンタさんみたいに優しそうな笑顔のおじさんが出迎えてくれた。
街からすこしはなれた山沿いにおじさんは住んでいた。
石を積んだだけの簡易的な家。
屋根は苔むし、周りは草が生え放題で、お世辞にも綺麗とは言えない。
街の人気者シュタットおじさんは、家の入り口の前に、たくさんのガラクタを広げて座っていた。
周りにはたくさんの子供達が集まっている。
ジュナイルでも変わり者として有名なおじさん。
ふらふらと世界各国を旅しては、ガラクタを持ち帰ってきて、コレクションにしていた。
『おじさん、これなあに?』
『お、お目が高いねえ。これはニースに行った時だったかな、船の中で見つけてね』
よく子供達が面白がって見に来れば、待ってましたと言わんばかりに、得意げに語り始める。
シュタットおじさんはサラの召し物や、なぜ1人で来ているかは聞かなかったし、いつも笑顔で出迎えてくれた。
『サラちゃん、これをあげるよ』
その日もおじさんのコレクションを見に来ていたら、可愛らしいオカリナを貰った。
試しに早速吹いてみた。
ピュウ、フー。
意外と難しい。
上手く吹けなくて手間取っていると、
『貸してごらん』
上から優しい声が降ってきた。
見上げれば、それはそれは麗しい王子様のような少年が微笑んでいた。
アルスはサラにオカリナの吹き方から、色んな事を教えてくれたし、話し相手にもなってくれた。