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異変と始まり
「そろそろ潮時か」
目を閉じて、ゆっくり息を吐くように紡がれた言葉をヤックは理解した。
『行くのか』
返事などせずとも、答えは分かっていた。
魔女はここ数年で本気を出し始めてきた。
ナワルドに攻撃を仕掛けるようになった今、アルスの居場所は此所ーアルヴェルではない。
「民を守りたい」
ヤックはフッと笑う。
『血が繋がらなくても王の血をしっかり受け継いじまって』
「やめてくれ。アイツは父親なんかじゃない。」
ヤックはアルスの生い立ちを知っている。
王の暴君ぶりにさぞアルスが御立腹な事も。
『なあ、アル』
背を向けて立ち去ろうとするアルスを呼び止める。
『サラちゃんを傷付けるなよ』
背を向けた背中に、冗談なのか本気なのか、少し低めの声でそう言った。




