表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姫はドラゴンに恋をする  作者: 楡葵
第6章
35/40

ヤックとの出会い

その少年は、クールな瞳の中に、誰も寄せ付けない、忌避の色を浮かべていた。


そして、とても懐かしい匂いがした。


ヤックはドラゴンだ。

100年ほど前からここアルヴェルの森に住んでいる。


外は滅多に出歩かない。

長い間、魔獣の巣窟となっているのだ。


ナワルドは呪われている。

1000年前に魔女が呪いをかけ、それ以降季節はずっと冬のままだ。唯一、アルヴェルだけが狂ったように生い茂っている。


1000年前の禍は、ナワルドの大きな転換期として、その後ずっと語り継がれてきた。


“彼”はもういない。


森を統べる者がいなくなり、無法地帯となったアルヴェル。


魔女というものは、人々の荒んだ心の化身なのか、弱った心の前に必ず現れた。


魔女の手によって作り出された魔獣は、次々に人を喰らって巨大化していった。


魔女の手口は巧妙だった。人に化けては、甘い言葉で心を揺るがし、闇に落とす。美しい女の姿になってしまえば、多くの男はすぐに操り人形にされた。

“娘の心臓を奪ってこい”

そのように命令すれば、獲ってきた。そして、魔女は若い心臓を喰らっては己の美貌を保つのだった。


魔獣の巣窟となったナワルド。

外へ出る者はほとんどおらず、外は年中雪。

町はしん、と静まりかえっていた。

そして、人々は笑わなくなった。


そんな中、アルスは国から魔獣討伐を依頼されていた。





「すっげえ退治屋がいるってんで会いに来てみたら」


全く気配を感じなかった。

驚いて振り返ると、巨大なドラゴンが見下ろしていた。


「まだ若い兄ちゃんじゃねえか」


気さくな彼とはすぐに打ち解けた。


「その話せる奴がいるってのは、俺も聞いたことがある。だが、何百年に一度の逸材だぜ?」


アルスはその逸材だった。誰も教えてくれなかったので、今まで心の内に秘めていたものを洗いざらいぶつける事ができた。


「怖いんだ、人でなくなっていく自分が」


一緒にいて5年。やっと吐き出してくれた。


「大切な人に忘れられるのが」


大切な人がいてよかった、とヤックは思った。


感情がなくなってしまったら、人でなくなったも同然だ。だが、アルスにはまだそれがある。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ