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姫はドラゴンに恋をする  作者: 楡葵
第5章
33/40

一歩

しばらく見つめ合っていると、ガルの顔が近づいてきた。


これが口付けであることはわかっているし、ガルは夫であるため、拒む理由などない。


(いや、、、)


その瞬間、アルスの顔が頭を過ぎ、ぎゅっと目を瞑る。


口付けが落とされたのは唇ではなく、おでこの上だった。


「……?」

「大切にしたいんだ」


そう一言告げて、ガルは去っていった。






最近よく、胸の宝玉が光る。

特に夜、それは鮮明に。


「何か嫌な予感がするのは、気のせいかしら」


"黒い稲妻の下で、彼は待っている"


そう、彼は言った。


危険が伴いそうな事は大いに予想できる為、巻き込まないように、ガルにも、誰にもこの事は言っていない。


言ったら必ず反対され、サラの疑問は永久に未解決のままになってしまう。


そもそも、外出は禁止されている。


どうしたものか。





その日の夜。


また宝玉が光り出した。


"サラーシャ"


声が聞こえてくる。


"時はきた"


その瞬間、サラはなぜか中庭に向かって走っていた。




"来たか、巫女よ"


やはり、彼はいた。


"さあ、行こう"


差し出された手の平の上に、飛び乗った。





夜の森は不気味で、闇そのものだった。


次の瞬間、


「……っ」


目の前が真っ暗になるくらい大きな影が現れた。


魔獣だ。

あの馬車の時よりも大きい。


もう、駄目だ。

ぎゅっと目をつぶった時だった。


ぐいっ


「……!?」


凄い力で体が引き寄せられ、気づけば地面の上に下ろされていた。


彼は、黒騎士だった。

この前忠告を受けたばかりなのに。


「二度と来るなと言ったはずだ」

とても怒りを含んだ声色。

握る腕がぎりぎりと軋み、怒りが伝わってくる。


「ごめんなさい!でも、ドラゴンを助けたいの!」


殺されるかもしれない、そんな恐怖の中、出てきたのはそんな言葉だった。


「サラ……」


「え…….?」

なぜ私の名前を知っているのだろう。


「もうこれ以上俺の心を切り裂かないでくれ……」


トクン


とても熱を孕んだその声色、その言葉に、胸が高鳴る。





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