恋慕
サラとガルが親しくなるのは予想外だったが、召使い達は歓迎した。
この結婚は政略結婚とばかりおもっていたが、そうでもなさそうだ。
トリオも最初はガルを毛嫌いしていたが、だんだんと人柄が見えてくると、その気持ちも緩和されていった。
2人が本当にお互いを想いあえるならこれ以上の幸せはない。
「サラ様が笑っていられるなら、それが私の幸せよ」
「サラ様大好きでし!」
「……最高」
「サラ、たまには庭を歩かないか」
珍しく、ガルから誘いを受けた。
「ええ勿論です、旦那様」
まだ旦那様という響きには慣れなかったが、不思議と自然に言えた。
紳士のガルはサラに手を差し伸べ、サラもそれに応える。
召使い達は穏やかに2人を見守った。
側から見ても仲の良い夫婦だ。
ナワルド城の庭は広大だ。
しばらく歩くと、綺麗な湖があった。
振り返れば、ずいぶん城が遠く見える。
「よく母親に連れてきてもらったんだ」
唐突にガルは語り始める。
「良かったら、聞かせて下さる?」
寂しそうなガルの心の支えになってあげたかった。
「母親は、金と王位にしか興味がなかった」
あまりにも氷のような表情に、なんと口にしたらいいかわからず、俯いた。
それに、本当にそうなら、ガルとは随分雰囲気が違うことになる。
城に飾ってある肖像画では、とても綺麗な人だった。
「俺には腹違いの兄がいるが、たった数歳の違いで第1王子になった事もあって、目の敵にしていた」
「俺は王位なんて興味なかったから、醜い争いだと思った」
だが、ガルの母親はあの手この手でアルベルトを引きずり下ろし、ガルを第1王子にさせ、女王の地位を望んだ。
刺客を送り込んだり、食事に毒を盛ったり、あらぬ悪評を立てたり。
それでも王はなぜか、アルベルトを第1王子とした。
発狂した母親は、1人でアルヴェルの森に迷い込み、帰らぬ人となった。
「兄さんは俺が追い出したんだ」
そんな、と手を伸ばし、ガルの頬に触れる。
「違うわ、あなたのせいじゃない」
そう言った瞬間、サラは温もりの中にいた。
「こんな気持ちは初めてだ」
ぎゅう、と抱きしめられたことに驚いて目を見開く。
「ありがとう」
子供のように顔をくしゃっとさせながらそういったガルに、愛おしさを感じるのだった。




