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姫はドラゴンに恋をする  作者: 楡葵
第5章
30/40

第1王子妃

召使い達が夕餉の準備などで忙しい時は、そちらに集中してもらえるよう、城内に限り1人でも行動させてもらっている。


ユーリはやっと城周辺に危険がない事を確認し、さらに遠方の偵察を始めた。あまりにも1日中休みなくやっているので、週1回は必ず自分の時間を作るように命じた。


1人でやる事といったら大半が図書館通いだった。

あの部屋へも、ガルに鍵を授かって自由に出入りする事が許された為、毎日のように通っている。


ガルは熱心なサラに協力してくれた。

進んで教えてくれる訳ではないが、サラが聞いた事は全て答えてくれた。


今日も図書館の帰り道。

中庭の景色を見ながら外廊を歩いていると、ふと声がかかった。


「あなたがサラちゃんね?」


いつの間にいたのだろう。

ぼうっとして歩いていたから、気づかなかったのか?

目の前には、それはそれは美しい女性が微笑みながら立っていた。


「私は第1王子アルベルトの妻、アザエラよ」


美しい漆黒のウェーブのかかった髪、切れ長な紫の瞳、雪のような白く透き通った肌、艶めく赤い唇。そして、豊満な胸、くびれ、スタイルまでもが色気を漂わせていた。

生気も、年齢をも感じさせないその姿は、まるで永遠にそのままであってもおかしくはなかった。


そもそも、第1王子は10年程前にナワルドから姿を消してから、消息不明となっている。それ以外にジュナイルに入ってきた情報はなかった。


「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません」


「いいのよ。私の事を知っている者は少ないわ」


サラをじっくり舐め回すように見た後、その顎をくいと持ち上げる。


「環境も変わって大変でしょう。たまに私の部屋にお越しなさいな。力になれる事もあるでしょうし」


優しい、けれど、全てを見透かすような濃紫の瞳が、微笑んでいる。


その言葉は、サラを安堵させた。

「ええ、そうさせて頂きます」


その瞬間、艶めいた唇が吊り上がったのにサラは気づかなかった。


「アザエラ」

背後で突然声が聞こえた。振り返れば、ガルが険しい表情でこちらを見つめていた。


ガルは警戒するようにゆっくりと近づき、サラの腰に手を回して守るようにぎゅっと引き寄せた。


「サラに何かしたら、ナワルドも兄さんも決してお前を許さない。わかっているな」


2人の間に何かあったのだろうか。


「心配性だねえ、ガル。ずいぶんこの娘に惚れ込んじまったみたいだね」


見透かすように笑う義姉に、ガルは押し黙る。


「大丈夫だよ、取って食ったりしない」




それから、サラはアザエラの所で過ごす事が多くなった。


部屋を訪問すればいつだって気前よく入れてくれ、サラの好みのお茶やお菓子も揃えてくれていた。


「ガルはああ見えてシャイなの。気にする事ないわ」

アザエラは色々なアドバイスをくれた。


そして、サラの力にも気づいていた。

「あなたのような力は逸材よ。狙われてしまうわ。私が助けてあげる」


召使いにはあまり心配をかけたくない。

次第にサラにとってアザエラは、心の拠り所となっていった。


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