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姫はドラゴンに恋をする  作者: 楡葵
第4章
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ドラゴンと人間 3

ここは、アルヴェルの森の中心に位置するクーゴ広場。

いつも大勢の動物が集い、コミュニケーションを取り合っている。


今日に限ってはそんな賑やかさは一切なく、静まり返ったその場には重たい空気が流れていた。


まるで示し合わせたように空もどんよりと曇り、明かりの差し込まない広場は一層暗く重い。


中心には大きな石の祭壇があり、そこに"彼女"は横たえられ眠っていた。




『あの人間の娘がいなくなれば、長も目がさめるだろう』


リフィルが人間の娘と親しくしている事に、不安を感じる者はかなり多かった。

何とかして、またリフィルに威厳ある統治者になって欲しかった。



祭壇に続く石段の下で、動物達は不安そうに空を見上げる。

正直なところ、娘の命まで奪うつもりはなかった。

誰もがそう思っていた。


『さあ、憎き人間の娘エルを殺してしまえ』


しかし、事態は一変、

突然目の前に姿を現した若く、美しい女。


女が声を発した途端、その場にいる全ての動物の目が赤く光った。


『さあ!』


さらに女が促すと、一頭のドラゴンが石段を登り始める。


エルまであと100メートル。













それはほんの数十分前のこと。


『おやおや、そんなに塞ぎ込んで。恋煩いかい?』

上を見上げれば、いつの間に来たのか、ローブを被った女が枝に座ってこちらを見下ろしていた。


状況を知っているのか、ニヤニヤとこっちを見ている。


魔女。

弱った心につけ込む悪魔だ。


『貴様か、エルを攫ったのは』

まず第一に思いつく容疑者だった。


魔女はヒヒヒ、と嗤った後、


『森の統率が人間にご執心だと聞いてね、面白そうだから見に来てやったのさ』


『だが残念。娘さんを攫ったのはあたしじゃないよ』

リフィルは訝しげに見上げる。


『確かにスープにしたら美味しそうだけどねえ!ヒッヒッヒ』


本来なら切り刻んでやりたいところだったが、ここは魔女の挑発に乗っている場合ではない。唯一の手がかりなのだ。


『右眼をくれてやる。場所を教えろ』

『おや、お安い御用だよ』


魔女に頼み事をする時は、体の一部を差し出さなければならない。

リフィルは、迷う事なく、右眼をやった。

とにかく、エルが大切だ。

自分の事など、二の次でいい。



そして、広場を目指して飛び立った。


『そう、あたしは応援してやっただけさ』


そんなつぶやきも聞かずに。




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