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兄との思い出
ガルは、珍しくバルコニーに出ていた。
明日は特別な日になる。
兄アルベルトが出て行ってもう10年が経つ。
空を見上げ、兄との思い出を振り返る。
『アル兄様は、花壇がお好きですね』
『落ち着くんだ、ここにいると。いろんな花を見られるだろう?』
色とりどりの花に囲まれて微笑む兄は、とても絵になって。
ガルは少しの間、声も出ず見つめていた。
しかし、その中に、一つだけ、何も植えられていない花壇があった。
正確には、「植えられていた」のだが。
『兄様は、アリアはお育てにならないのですね』
そう、昔はこの花壇一面にアリアが咲いていたのだ。
いつの日か、兄はこの花壇を処分するように庭師に命じた。
その花がその後どうなったのかは分からない。
『・・俺には育てられないんだよ』
そう、哀しそうに言う兄。
こんな顔をするところを見たことがなかった。
『兄様、すみません……』
『いいんだよ。きっと触れたら……壊してしまうんだ』
空を見上げ、目を細めるアルス。
その瞳は、雲の彼方の、誰かを見ているような気がした。
『大切なんですね……とても』
『そうだね……だから、離れるんだ』
『つらく……ないですか……?』
最後の問いかけには、兄はほほ笑んだだけで、答えてくれなかった。
けれど、なんとなく、答えはわかった。




