アルヴェルの森
「本来は森を統べる者が持つものだ」
まるで手の上の宝玉が見えているのではないかと思うくらい、ガルは森のあらゆる事象に詳しかった。
「だが、統率のドラゴンは1000年前に死んだ。それから森を守っているのは、精霊達だった」
ドラゴン。
その啼き声によって雷雲や嵐を呼び、また竜巻となって天空に昇り自在に飛翔すると言われる。
その姿を見られる者はごく僅かだ。
もはや否定などできない。
ドラゴンは実在する。
サラは、この目で見てしまったのだ。
極めつけに、この宝玉。
「森には良き存在だけがいるわけではない。」
この間の魔獣。
サラはごく、と唾を飲み込む。
「今や魔力は森を覆い尽くすほどに強大なものになっている。精霊の力も及ばないくらいにな」
だから、"彼"は来たのだ。
森を守れる者は、もう森の中にはいない。
サラは宝玉をきゅっと握る。
「これを預かってしまったからには、もう逃げられないわ。」
サラの眼は、まっすぐ前を見据えていた。
その瞳を見たガルは、安心したように目を閉じ、語り始める。
ーー1000年前
まだ国というものが存在していなかった頃から、そこには巨大な森が存在していた。
そして、長い長い時が経ち、様々な国が興亡を繰り返す中、その森だけは依然としてその威厳も、面積も失わぬまま、存在し続けてきた。
好奇心で入った者のほとんどは2度と出てくることはなく、奇跡的に出てこられたとしても、体の一部を失っていた。
そして、彼らは口々にこう叫んだ。
『ドラゴンに襲われた』
と。
その森こそが、時代を超えて語り継がれることとなる、“アルヴェルの森”である。




