精霊の巫女
「しっ!静かになさい!」
「エミリーが1番うるさいでし!」
なんだか賑やかな声に、目を覚ます。
「ん……」
「姫様っ!」
「元気になってよかったでし」
「……よかった」
心配していた召使いトリオがすぐ側についていてくれたようだ。
エミリーに至っては、サラの顔を見るや否や、飛びついてきた。
「もう、エミリーったら、心配性ね」
「本当に、よかっ……た……」
「エミリー?大丈夫?」
サラが顔を覗き込もうとした時、エミリーがよろけて滑り落ちそうになる。
しかし、倒れるのを予測していたかのように、ルチが抱き止めた。
「……アホミリ―」
「……るさい、わ、よ」
「……話、ダメ」
エミリーをベッドに寝かせる。
「そうよエミリー、今日はもう仕事はいいから、寝なさい」
「姫……様ァ」
サラの言葉に涙ぐむエミリー。
「さて、サラ様はお勉強の時間ですので部屋に戻ります。エミリーはよく休むように」
「うう……ルチ、プト。エミリーをよろしくね」
(それにしても、ルチってあんなにカッコよかったかしら)
とても失礼なことを考えながら部屋に戻る。
そして今日も、教育係の熱血指導に耐え忍ぶサラであった。
長い勉強も終わり、サラはユーリに嘆願して、少しだけ自由時間をもらった。もちろん夜も遅いため、範囲は厳しく限定されたが。
行き先は、もちろん例の場所。
「ごっごきげんよう」
「……あれで忍び足のつもりか?」
「うう、修行中ですの」
どうやらずいぶん前から起こしてしまっていたようだ。
恥ずかしくて俯きそうになるが、目的を思い出してぱっと顔をあげる。
「お聞きしたいことがありますの」
「そのようだな。入れ。茶を出そう」
サラをソファへ座らせると、ガルは茶を沸かしに行ってしまった。
1人残されたサラは、ぐるっと部屋を見渡す。
(なんだか緊張してきちゃった……)
勢いで来てしまったが、誰かに見られていたらこれは夜這いというものになるのだろうか。
(ユーリにばれたら殺されるわね……)
絶対零度のほほ笑みを浮かべる教育係を思い浮かべ、ブルッと体を震わせる。
無意識に手に持っていたものを握りしめ、はっと我に返る。
ゆっくりと手を開くと、金色に輝く玉。
やはり、この手の上にある。
改めて、まじまじと見つめる。
「これが、宝玉」
「今日はその話をしよう」
いつの間にか茶が出され、ガルが目の前のソファに座っていた。
びっくりした心臓を必死で落ち着かせながら、こく、とうなづいた。




