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伝説のドラゴン
兄上はいつも周りに煙たがられていた。
『本当なんだ!本当に見たんだ!』
ドラゴンを俺は一度もこの目で見たことはない。
『信じてくれよ!』
「あんな子に関わってはいけませんよ」
母親は孤児で第一王子になった兄上を疎んでいる為、よく俺と兄上を引き離そうとした。
「兄上を馬鹿にするな!ドラゴンは本当にいるんだ!」
俺は兄上を批判する奴に片っ端から食ってかかった。
俺は、誰が非難しようとも、兄上を信じている。
俺だけは兄上を守る。
ドラゴンは、必ずいる!
だが、俺まで巻き添えになるのを避ける為か、兄上はそれからドラゴンについて語らなくなった。
「ドラゴンなんていないんだよ」
哀しそうに笑う兄上の顔を見ていられなかった。