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姫はドラゴンに恋をする  作者: 楡葵
第2章
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ドラゴン

「あ、あんなところに」

帽子は氷の張った上に舞い下りた。


ふと足下をみると、チューリップが咲いている。

まるで、時が止まったかのように、その美しい姿を維持したまま、固まっていた。


「綺麗……」


つい、しゃがんで見とれてしまう。






ザ・・・


「?!」

とても近くで物音がした。


振り向くとーー


そのまま固まった。




「あ・・・」


初めて見る、大きな、大きな黒い塊。


童話で見たことがある。


これが、"ドラゴン"だ。


その瞬間、胸元のネックレスがガタガタと揺れ始める。




どうする


逃げるにはもう遅い



こちらを見下ろすつり上がった琥珀色の双眼。


フシュウウウウ

吐く息だけで、地面がガタガタと震える。


足は動かない。でも、しっかりと見据えた。




口を開いたと思えば、驚くべき言葉を放った。


“サラーシャか”


それは間違いなく、ドラゴンから発せられた。





気づけば目を見つめながら、うなづいていた。


ドラゴンは安心したよう息をつく。


そして、低い声が響いた。


“黒い稲妻の元、彼はお前を待っている”




そう言って、彼は飛び去っていった。


「黒い、稲妻……」


何を意味しているのか、全く見当がつかない。





その時。


ザザッ、と背後で音がした。

びっくりして振り返る。


「こんなところで護衛も付けずに何してるんです」


チューリップに囲まれて仁王立ちしている、端正な顔立ちの青年。


花壇が背景となり、より王子様感がアップしている。


しかし、その眉間には思いっきりシワが寄っている。



「ユーリ、おかえりなさ「じゃないでしょう!」



彼には先程の一件は見えなかったのか、何も気づいていないようだった。


心配させたくないのもあり、さっきのことは言わないことにした。


どうやら教育係はかなりご立腹のようだ。


「あなたは王女としての自覚がなさすぎる!」

「えと、帽子が」

「だいたいあの三人はどうしたんです!」

「えと、帽子、とりに……あの」


怒りが頂点に達すると、ユーリは人の話を聞いてくれなくなる。

世にも恐ろしい形相でズンズンとこちらに向かってくる彼に、自然と足が後ずさる。


グイッ


「ユ、ユーリ?!」


気づけば彼の胸の中にいた。


「自覚して下さい、あなたはナワルドの王女なのです」


ズキっと痛いところを突かれ、押し黙る。

そうだ、サラは嫁いだのだ。


「早く部屋に戻りますよ」

「は、はい・・・」


ユーリも必死でサラを守ろうと頑張っているのだ。

迷惑なんてかけてられない。


「ユーリ」

もちろん、こちらを向いてはくれない。


「私、勉強頑張るね!」

返事こそなかったが、口元が少し緩んだ気がした。





「「あっ姫様おかえりなさ……」」


部屋に戻ると、召使いトリオがほんわかと出迎えてくれた。


が、それも束の間。


トリオはサラを引っ張るユーリの顔を見た途端、青ざめていった。


「お前たち!ちょっと隣の部屋に来なさい!」


「「ひいいいい」」


今のユーリを見たものは、口を揃えてこう言うだろう。




「……阿修羅」






その晩。


(なんでよりによってユーリと2人部屋なの!)


召使いトリオは、護衛が確実だからと言っていたが。


(エミリー達、逃げたわね)


さっきまでこっぴどく叱られていたのだから無理もない。




「サラ様……?」


不安そうに見つめていたのに気づいたのか、ユーリが支度の手を止めて振り向いた。


「エ、エミリー達は、いつも私のためを思って動いてくれるだけなの」


「……わかっています。でも、今回ばかりは別です」


(わかってないじゃないのよ〜〜)


サラはふて寝しようとする。


しかし。


「サラ様、まだ今日のお勉強をしていませんよ?まさか、開口一番、サボるおつもりで?」


「うう……やります」


王女様の夜は長かった。







翌朝。


「おはようございます。姫様、目が開いていませんが?」

「ユーリのせいです」


少しの沈黙の後、

「……まあっ!」

「……ナニ勘違いしてるんでし」

「……変態おばさん」

「うううるさーーい!」


エミリーはサラとユーリが恋仲になる事を夢見ており、いつも2人の時間を作ろうと奮闘していた。


一方、サラは鈍感すぎて、その会話についていけなかった。


「勝手な妄想はやめて、支度しますよ。今日はガル王子との謁見の日なのですから」


昨日サラの勉強で夜遅くまで起きていたはずなのに、ユーリは隈ひとつない。いたって通常だった。


「サラ様は体力がなさすぎます」

「……ごもっともです」


ますます教育係に頭が上がらなくなっていく一方である。





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