ナワルド
移動中はカモフラージュの為、馬車を2台に分ける事になった。
1台の古びた木製の馬車にはサラとユーリが、もう1台の豪華な馬車にはトリオが乗る。
トリオ達には囮として主道を行ってもらい、サラとユーリは山道を隠れて進む事になった。
プトはともかく、エミリーとルチは武術もかなり長けている。そこらのゴロツキくらい簡単にのせる。
「みんな、気をつけてね!」
「サラ様も!!」
別れを惜しみ、両馬車は出発した。
城が見えなくなるまで手を振ると、正面に座っている教育係を見る。
文句を言いながらも、一緒に来てくれたことがとても嬉しかった。
「ユーリ、来てくれてありがとう」
「……本当にあなたには振り回されますよ」
窓の縁に頬杖をつきながら、面倒臭そうに溜息をつく。
「そうね、私って疫病神でも憑いてるのかしら。でも、ユーリがいるから安心よ?」
少し寝るわね、と、なんの警戒もなく男の肩に頭を預ける少女。
「……先が思いやられる」
人情に一切無頓着な彼が、唯一、心をかき乱される少女。
この僅かしか年の違わない娘の笑顔に何度、救われた事だろう。
そっと少女の頭を撫でてやる。
そして__
『お仕置きです』
眠っている少女の頭に、そっと唇を寄せた。
山の中まで来た頃には、外はもう真っ暗だった。
もう一度目を閉じようとしたその時だった。
ガオオオオオ!!
耳をつんざくような獰猛な唸り声と共に、激しく馬車が揺れ、止まる。
叫び声を上げそうになるサラの口元を素早く腕で覆い、足元にしゃがみ込んで窓から様子を窺う。
「魔獣です!静かに」
暗闇の中に微かに見える巨大な黒い塊は、どうやら馬車を攻撃しているわけではないようだ。
何かもう一つの影と戦っているように見える。
ドオオオオン!!
そして、魔獣は倒れた。
はっきりとは見えなかったものの、サラには先程魔獣を倒した者の正体を確信した。
「あれが、黒騎士…」
ユーリは、無言で肯定した。
「あの、黒騎士様でしょうか?先程は助けていただき心より感謝申し上げます」
サラは馬車の窓を少し開け、騎士に向かって礼を叫ぶ。
「っ……!」
騎士はサラを見ると、驚いたように目を見開き、顔を反らしてしまった。
「2度とこの森に近づくな」
そう言って、去ってしまった。
先程の驚いた表情を不思議に思い首を傾げるサラと、その隣で何故か目を鋭く細めるユーリだった。




