第二話
ライトは自分の部屋に戻ってきていた。あの後食事が進まなく、余り家族と一緒に居たくない気持ちからか、すぐに食事を止め静かに自分の部屋に戻っていた。
彼は今学園に行くために制服に着替え直し、その他の準備をしていた。
その時ふとライトは準備をしている手を止めた。その手には一枚の写真があった。
2、3ぐらいのライトを抱っこしている20代後半の美しい女性だ。
女性の名前はアリア・グラバニール。七年前に亡くなったライトの母だ。
髪は髪が腰まで長く黒い髪に黒い瞳。抱えているライトに向けて微笑みかけ優しそうな雰囲気を持っている。
「母さん……。」
ライトは悲しそうな泣きそうな表情をしながら写真を眺めていたが、やがてそれを制服の内ポケットに大切にしまいこんだ。
そして、先程までやっていた作業を再開した。
「兄さん、時間ですよ。」
軽いノックと共にそんな声がかけられた。準備を終えていたライトは荷物をまとめたカバンを持ち、部屋を後にした。
「学園楽しみですね、兄さん!」
「……ああ。」
外に出ると父が用意してあった馬車にエリスと乗り込んだ。二人が乗るのを確認すると馬車はゆっくりと学園に向けて走り出した。エリスは学園が楽しみなのか、いつもより少し興奮した様子でいた。
「早くつかないかしら。」
「……。」
エリスの浮かれた言葉にライトは何も返事を返さなくなった。
そんな状態が学園に着くまでの30分間ずっと続いていた。図らずも二人にとって意味は違うが学園に着くまでの時間は長く感じられていた。
学園に着くとライトとエリスは馬車を降りた。周りを見渡してみると、他にも馬車から降りてくる生徒らしき子供が次々に姿を現れてきた。
次にライトは目の前の学園に目を向けた。
ライトとエリスがこれから四年間通うことになるアステリカ学園。広い敷地を持ち、沢山の生徒が通っている。また数多くの騎士や王族直属兵などを次々と輩出している名門校である。貴族も通うことから安全性も高く、それも人気の一つだ。
「兄さん、行きましょう。」
ライトが学園を眺めていると同じく眺めていたエリスがいつの間にかライトの手を握り、歩き出した。
エリスが嬉しそうな顔をしていると同時に、ライトはエリスに握られた手を顔を顰めて眺めながら、されるがままの状態で歩き出していた。
そんな彼らは後ろから眺めている一人の少女の視線に気づくことは無かった。