第一話
青い空に日が昇る。ある屋敷の一室に日の光が差し込んだ。
その部屋のベットに一人の少年が眠っていた。
少年の名前はライト・グラバニール。今年で15になる赤髪の少年だ。
そして、ライトの部屋の扉をコンコンっと叩く音が聞こえる。
扉を叩いた人物は、ライトの返事を待たずに扉を開け、部屋に入ってくる。
入ってきたのは、ライトの双子の妹にあたる、エリス・グラバニールだ。
エリスは赤い髪に紅い瞳を持ち、綺麗と評される美貌の持ち主だ。
そんな彼女は、ベットで寝ているライトに近づいていく。
「兄さん朝ですよ、起きてください。」
ライトの体を揺すりながら、彼を起こそうとする。
何度か揺するうちに「……うぅ。」と唸る声がライトから聞こえて来た。
やがてライトは目を覚まし、その身を起こした。
寝ぼけ眼でエリスの顔を確認すると、嫌悪感をあらわにした顔をした。
しかし、エリスは慣れているのかライトの表情の変化にもさして反応を示さず「朝食の時間です。」と言うと、静かに部屋を出て行った。
ライトはエリスが部屋を出ていくのを確認すると、ベットから出て少し肌寒さを感じながら、着ていた服からいつも自分が着ている服に着替え始めた。
数分もしない内に着替え終わると、自分の姿を鏡で確認して部屋を出た。
鏡に映った自分の『赤い』瞳を開きながら。
「遅いです、兄さん。」
食卓に着くとライトの姿を確認したエリスが食事の手を止めて兄に声をかける。
テーブルにはエリスの他に二人の男性が座っており、食卓の周りには数人のメイドが控えていた。
「すまない。」
なるべく妹の顔を見ずに謝り、自分の席に着いた。すると、後ろに控えていた数人のメイドの内の一人が彼の前に食事を置いた。ライトは置かれた食事に手を伸ばし食事を始めた。
「今日から、お前たち兄妹も学園に通うことになるな。」
静かに食事を取っていたら一人の男性から声がかかった。
この家の主人たるアルフォード・グラバニールからだ。赤い髪と紅い瞳を持った、大きな体をしている。
その身に纏う雰囲気は戦士のそれとも言うべきものを持ち、眼光も鋭い。その目で彼ら兄妹を見た。
「余り問題を起こすなよ。」
「わかっています。」
「……。」
エリスはすぐに返事をしたが、ライトは返事をしなかった。そんな彼の態度が目に余ったのかアルフォードは鋭い眼光をさらに鋭くし、再度ライトに聞くと小さく「……わかりました。」と声がした。
「父さん、ありもしない事を聞くもんじゃないですよ。エリスは優等生で、ライトは無能なんですから。」
「バッレト兄さん!」
エリスにバレットと呼ばれた男性は今年17になる彼ら兄妹の兄だ。赤い髪に紅い瞳、そして整った容姿をしている。
そんな彼はライトのことを馬鹿にしているのをエリスに咎められるが、肩をすくめるだけで特にライトに謝りもせずに止めていた食事の手を再開した。
馬鹿にされたライトは何も言い返さずにただ俯いていた。
「安心してください兄さん、何かあっても私が兄さんを守りますから。」
「……。」
俯いていたライトにエリスが自分の決意をライトに言うと彼女も食事を再開し始めた。
ゆえに気づかなかった。ライトがどのような表情をしていたのかを。