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火柱

作者: 堤 伸一

 炎上、最近ではツイッターなんかでの軽率な発言が多くのユーザに広まって非難の嵐になるケースのほうがしっくりきますね。ネットサービスには便利なところと暗黒面があって油断ならないです。メールもスパムがあるし、ブログでも炎上がある。じゃぁ、実際にそんなことになったらどうしましょう。


 「やばいことになったなぁ、あそこまで叩かれるとは思わなかったよ。へこむなー」

 何の気なしの軽はずみな書き込みが原因で洋一のブログはすさまじいアクセス件数とコメントで圧倒されている。しかも大手掲示板にもこの一件が書き込まれ、これからさらに加速しそうな勢いだ。

 「やめっちまおうか、でも結構続けてきているし友人との連絡とかにも使っているし、例の記事だけ消してシカト決め込むかな。でもんなことしてもコメントが関係ない記事にあふれるだけだもんな、マジへこむわ~」

 見る気になれないコメントの山の中に、雰囲気の違うコメントがあることに洋一は気がついた。

 「このたびは大変にお困りになっておられると考え、とりいそぎご連絡を差し上げました。私どもにお任せいただければ、きっとご満足いただけると確信しております。次のメールアドレスまでご一報を頂戴できれば詳細をご説明いたします。」

 明らかに捨てメアドがあってここに連絡しろってことか。コメントの主は空欄だ。でもメールぐらいなら大したことにならないだろうし、こっちも捨てメアドにしとけばだいじょうぶだろう。さっそくメールを送り返事を待つことにした。驚いたことにほんの数分でメールが帰ってきた。

 「ご連絡いただきありがとうございます。私どもは独自のノウハウで技術的、心理的に炎上を早期に終結させ、名前は伏せますが多くのクライアントから感謝されております。・・・」

 このあとは報酬の話があって洋一のような個人相手ならば着手金は無料で鎮火にかかるまでの期間によって数千円から数万円の事後報酬となっていた。

 「金か~、わけわかんねー相手に払うのも割り切れないな。試しに3日間の2万円コースっての頼んでみよ。ダメ元だし、うまくいったら捨てメアドだしバックれちまおう」

 依頼のメールを送ると効果は劇的に現れた。1日目から9割近く叩きコメントが減り3日目にはいつもの雰囲気に戻ったのだ。

 「なにこれ、マジだったのかよ。どんな仕掛けだったんだ?なんか気持ち悪いな、こういうやつとは早めにおさらばするに限るな」

 捨てメアドを処分し、安心したのもつかの間、今度は本メアドにメッセージが届いた。

 「ご連絡に使っておられたメールアドレスが不通となりましたので、失礼ながら連絡先を変更させていただきました・・・」

 「え、このメアドブログにも載せてないし、なんでばれるわけ?しかもこんな短時間で・・・」

 「成功報酬ですが、メールアドレス探索の手数料が増額となり2万3千円となります。・・・」

 不気味すぎるほど落ち着いた文面を見て、指定された口座に送金しないと今度はどんな目に遭うかと洋一は恐ろしくなったが、逆にどんな手で来るかとの好奇心も強くなってきた。命まで取りはしないだろう、とことん無視することに決めた。

 指定された期日を過ぎてしばらくすると自分のブログに何本かの記事が勝手に追加されていることに気がついた。どれも前にうっかり書いた記事よりも過激で挑戦的な内容だった。前の炎上がたき火なら今度は噴火のように炎上した。気が遠くなるほど時間が過ぎてブログは元の落ち着きを取り戻した。

 「なんだったんだよ・・・」疲れ果てた洋一の元にメールが届いた。

 「期日までの入金が確認できませんでしたので、別手段で該当分を回収させていただきました。」

 相手に届くとは思わなかったが黙っているのも何なのでどういうことか説明して欲しいと返信してみた。

 よほど几帳面な連中らしい、すぐにメールが帰ってきた。

 「炎上鎮火については私どもは様々なノウハウを持っております。メッセージの強制排除や微妙にずれた論戦に引き込んだりと言った方法以外にも、より大きな炎上を作り上げてそちらへ誘導する手段がもっとも手早く鎮火できるようです。またご縁がありましたら是非ともご用命のほどよろしくお願いします」

リアルに炎上の被害に遭われた方には謹んでお見舞い申し上げます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルのひねり方、お話しのまとめ方、共にしっくりくるもので大変楽しめました。 [一言] 読みやすくお話しのまとまりも締めもしっかりとうまくまとまっていて、楽しめました。ありがとうござい…
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