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44-私はいる

確かに夢があった

叶えたい願いがあった

夢中になれる時間があった


でも気付けばすべてが冷めていた

あの夢は今も夢のまま

諦めたわけではないけれどいつか叶うことを夢見たまま

どのくらいの月日が過ぎただろうか

世界全てが灰色に見えてしまうようになった

どんな出来事に対しても無感動で

この顔はまるで仮面のようだ

楽しいだけが人生ではない

辛いことがあるから嬉しいと感じるときがとても大切なものになる

自分に言い聞かせるように何度も繰り返す

どれだけ頑張っても沁みてはくれなかった

己を理解できずして何故他人を理解できようか

生きる意味さえも見失いそうになる

しかしこの世界から消えてやる義理などない

私を知らない世界に飛び出そうか

周りを嫌っている訳でもなければ

周りに嫌われている訳でもない

この関係を無関心という

自分というテリトリーに誰かを入れることは怖くて怯えた

責任を持てないから

いつも先を見過ぎていた

ひとときの感情に身を委ねることができるのならば

私はワタシでしかないから無理な話だけれど


一度だけ過去に戻れるチャンスをもらっても使う気にはなれない

叶えてやると心に誓った願いは私から離れたところで叶ってしまったから

想えばこの頃から少しずつ崩れ始めていたのかもしれない

努力して積み重ねてきたものはただの山となった

無駄になってはいないけれど虚しさはあった

力なく眺めていても何も変わらない

とりあえず動き出して今の自分になったはず

戻すことも怖いのだ

叶った願いがなかったことになったら

仮定でしかなくてもそれだけで足がすくむ

次に叶えたい願いが思い浮かばなかった

目の前に見えない壁ができたようで

見えるのに聞こえない

追っていた夢もよく分からなくなった


毎日のように仕事に打ち込む

やらなければいけないことがあるだけでどれだけ気が楽か

考える必要などないのだから

こんな私は好きにはなれないけれど

機械でいいじゃないか

人である必要ないじゃん

それもまた正論で

虚しくなる

夢中になったものは何だっただろうか

浅くて広くて

人から嫌煙されるくらい語れる人が羨ましかった

一度リセットしたい

それはゲームのように簡単なものではないけれど

私は大人なのだ

自由に動ける体があるから

一から夢中になれる時間を探しに行こう

人に嫌煙されるくらいの私を見つけよう





灰色の世界に一度だけ朱が交ったことがあった

すぐにでも消したかった

塗りつぶしたかった

子供の落書きのように塗り散らかされた世界から

助けてほしくて声を上げたけど

その人には見えなかったようで

当たり障りないことを怖々と告げて離れて行った

酷い世界に取り残されたまま

声を上げることも怖くなった

自分が異常に思えて

自分が悪者に思えて

朱に浸食されて

灰色だった世界が染まってしまう

だけど私は消えてやろうとは思わなかった

私が異常でもいいや

私が悪者でもいいや

ここは私の居場所じゃなかっただけ

諦めてしまったらすべてが消えてしまう

其れが復讐になるとは思えないから





またループして今も灰色の世界

薄れた朱を思い出す

あれは青春だったのかもしれない

思い出はいいことばかりではない

それでも今の自分がいる

また飛び出そうかここから

あの頃とは行動できる広さも違うから



夢中になれる時間を

私を求めてくれる世界を探して


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