42-世界
たくさんの人が消えていく
いつまでも経っても終わりは見えない
この苦しい思いを誰が受け止めてくれるというのか
始まりはいつだったのか
何が原因だったのか
きっかけは覚えてない、でも平和を願っていたことは確かなのに
人を憎み、恨み、不の螺旋が動き出す
一度始まってしまえば止めることなどできない
誰かを失い
誰かを憎んだ
そしてそれが生きる糧となる
仇を取ると人々は口にする
狭くなった視野は
敵か味方の判断しかできない
故に人々は簡単なことにも気付かない
己自身も誰かにとっては仇なのだと
誰もが願っているのは平和や安寧、偽りのない世界
同じ目的を持っていても反対側にいるものは
全て敵で
全てが悪だ
思想の違いから相容れることのできない者たち
そんな世界にも手を取り合おうとした者たちがいたはずだ
時には平民が
時には権力者が
時には力を勝ち取った者が
中心となる者がいれば
それに賛同する者もいる
そして世界が一つになる
だが、いつも中心になる者は自らの幸せを願うことはなかった
理想を提示し
理想を叶える
誰かのために
付き従う者たちはみな、己の幸せを求めた
故に不満はすべて中心になる者に集まり
また世界が崩壊する
まだ幼い少年の話だ
幼いながらに父が帰ってこないことを知っている
母が陰で泣いていることを知っている
自分には何の力がないことも知っていた
だから力を求めた
誰も悲しまない世界が見たくて
少年は大人になる
すべてを決断したあの日から時間はかかったが
世界が一つとなった
成し遂げたのは自分ではない
自分の傍らに立つ者が
結局平民は平民でしかなかった
しかし願いが叶ったことに心から喜んだ
たとえそれがつかの間だったとしても
人は何かしらの欲求により成り立っている
不満というものは欲求がある限り無くなることはない
世界は繰り返し続ける
平和と戦争を
だから僕はこう思う
泣かない世界は訪れない
泣けない世界が此処にある