41‐僕の恋人
辛い時ほど君は口を閉ざす
ただ一言
「助けて」
そう言ってくれたら
僕は何を犠牲にしても
君を救うのに
たぶん
それが嫌なんだろう
誰かが
何かが
犠牲になるくらいなら
自分が犠牲になった方がましだと
それが君の考えなんだ
自己犠牲的
何も知らない人はそう思うだろう
でも僕は知っている
いや
僕のせいなんだ
その行動を最善と取るのは
君をかばって事故に遭った僕
片目の視力を失った僕
笑うと顔の皮膚が引きつってしまう僕
今の僕
命があるだけ
自由に動ける体があるだけ
ましだと
何も君が背負う必要はない
そう言い聞かせても
君は聞いてはくれない
あまりにも聞き入れてくれないものだから
僕といることが辛いなら別れようかと
そう話した
君は涙を流して
首を横に振った
今さらながらこの切り出し方は
すごく卑怯だったと思う
僕自身が離れればよかったのに
それができなかったのは
君が憎いとか
そんな感情じゃない
ただ
君を好きな気持ちが変わらなかったから
傍にいたかったんだ
今も続く君との関係
辛い時ほど口を閉ざす君
その口が開くのを気長に待つ僕
ねぇ
そろそろ
待つのに飽きたんだ
何が辛くさせているのか知っている
その原因を取り除きに行こうか
ねぇ
僕の恋人




