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22‐愛し続ける
雨の降る街の中で君と手を繋ぎ見上げた空はどこまでも雲が広がっていた。
そんな空を見上げて君は言う
とてもきれいな空ね
と。
否定もせず肯定もせず、ただ繋がれた君の手を強く握った。
そうでもしないと君がどこかに行ってしまいそうだったから。
声には出さずに心で思う。
どうか彼女だけは連れていかないでくれ
そろそろ移動しようと君の手を引いたときこちらを向いて微笑んでくれた君の瞳には確かに自分が映っているのに君は見えていないのだろう。
ありがとう、そして愛していました。
そう君の声を聞いたのに
それは風の囁きで
それは過去の事で
今はすでに無いように
君は重力に逆らうことを止めてしまったように終焉を迎えた。
もう、声を出しても聞こえることはない
その目は見えなくても
その喉は機能しなくても
君の耳だけは全てを伝えていたから
だから…
もう、声を出して泣いても君に伝わることはない
そして
君の事を愛し続けるいつまでも。
それさえも君には伝わらない
それでも言葉にしたかった。




