7. VSデイダラボッチ
「じょ、冗談でしょ…!なんで、こんな…!」
走りながら、頭上から振ってくる地面でてきた腕を避ける。それは妖怪デイダラボッチのものだ。その体はアスファルトをはじめとした地面から出来ており、とてつもなく巨大だった。
こんな出来事は直近であったばかりだ。その時は巨大な蜘蛛だった。為すすべもなく逃げていた。
だが今日は2度目のハプニング。以前よりかは落ち着いている。その為、後ろを振り向き手を合わせて指を組み唱える。
「『皆』!」
『皆』。これは『在』のように妖怪に近しい者共に伝わる技。効果は対象の動きをとめること。なのだが。
「き、効いてない!!駄目だ!逃げよう!」
効果は全くなく、デイダラボッチの巨体は私めがけて進行していた。何故効果がなかったのだろうか。相手が格上すぎたからか。それとも私の妖力が足りなかったからか。
所詮は座敷わらしの血を引くだけ。何も特別ではないのだ。仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。
「は、はぁ、はぁ。また、このパターンだ。はぁ、はぁ。」
直線の道路を走る。すぐ脇にあった標識が、デイダラボッチの腕で振り払われた。あのパワーではひとたまりもないだろう。
どうするべきか。身体を動かしながら、頭もまた動かす。すると、側からパチパチと音が聞こえた。それは炎があげる音。
「!まさか、荒井くん…!?」
咄嗟に後ろを振り向く。目下のデイダラボッチは、想像通り炎に包まれていた。そしてその前には黒髪の少年、荒井くんがいた。
「あ、ありが…!!危ない!」
感謝を伝える前に、荒井くんへデイダラボッチの手が伸びるのを視認する。伝えようと声を張るが、無意味だったようだ。
「『皆』。」
荒井くんは『皆』でいとも容易くデイダラボッチの動きをとめる。そして、彼の炎で今度こそデイダラボッチを焼き尽くした。
「あ、ありがとう。荒井くん。」
「………僕は言ったと思うけど。雑魚は妖の狭間に来るなって。」
「ち、違うの!急にこっちに来ちゃって…。帰るための『在』も上手く発動しなくて…。」
「……………君もか。」
「もってことは、荒井くんも…?」
私の問いには答えず、荒井くんは何やら考え込む。口元に指をやって思案したかと思うと、私の存在を思い出したかのように此方へ視線をやる。
「今日、どうしてここへ来ようと思ったの。」
「え?な、何となく…?」
「君はなんの妖怪の血を引いてる?」
「ざ、座敷わらし、だけど…。」
「…………なるほど。ということは……あれは偶然じゃない……?」
ぶつぶつと呟く荒井くん。聞き取れた彼の言葉からは何やら不吉な予感がするのだった。




