32.期末テスト
「それでは始めてください。」
教師の言葉とともに、私は机上にあるテスト用紙を表向きにする。いよいよ期末テスト。今回は中間テストよりも科目が増え、技術、家庭科、美術や体育も対象となった。
表返した紙にはプリントアウトされた白黒の絵が数枚。美術のテストということなので、絵画に関する問題が出題されたのだ。正直、カラー印刷でないので分かりにくいが文句を言っても仕方がない。
覚えてきた知識と擦り合わせて出された絵画を年代順に並べた。
美術が終わると次は数学Ⅰ。前回は平均ほどの成績だったが、今回は違う。荒井くんに極意を教わったのだ。インプットとアウトプット。それを駆使しての勉強で、そこそこの自信はある。
数式の形は違うものの、解き方はほぼ同じ。パターンを頭に叩き込んだので、シャープペンがすいすい進む。
青柳高校のテストは1週間かけて行われる。瞬きする間に1週間が過ぎ去った。
中々の出来栄えではないかと、自分でも思う。まぁ、結果はまだ分からないが。
とにかく今は結果を待とう。そう思い、校門を出る。夕暮れ。傾くオレンジが私や周囲の生徒の影を細長く伸ばす。
「荒井くん。テスト、お疲れ様。」
校門前に見知った顔がいた。短い黒髪を揺らす男子生徒、荒井くんだった。
「おつかれ。」
「教えてもらった勉強法のお陰で、良い点取れそうだよ。もしかしたら、荒井くんを超えるかも。」
「もしそんなことがあったら地球が終わるだろうね。」
「そ、そこまであり得ないことかな…!?」
荒井くんは変わらずツンとした態度だった。だが、勉強法を教えてもらったのは確かなので感謝はしている。
「そういえばそろそろ夏休みだね。予定とかあるの?」
「ない。」
「へー。私は海にでも行こうかなって。あっ!花火大会は絶対欠かせないよねぇ。」
「生徒会執行部で夏合宿あるみたいだけど、何処か行く元気あるの?」
私と荒井くんは生徒会執行部に入っていた。夏合宿というもので何をするかは知らないが、どうやら夏休み中も活動があるようだ。
「勿論!でも、夏合宿って何するのかな。」
「さぁ。学校の掃除とかじゃない。泊まりだろうからゆっくり出来るだろうしね。」
「泊まりかぁ。学校でお泊りって楽しみ。………でも、うちの学校出るらしいよ。怖いよねぇ。」
「…………………ふ、ふぅん。あっそう。」
「もしかして…怖いの?おばけ?」
「…………まさか。」
否定はするが、荒井くんの顔は明らかに引き攣っている。何だか意外だった。妖怪を相手にできるのに幽霊は苦手というのも不思議な話だ。
「へぇー。怖いんだ。おばけ。でも、妖怪も同じようなものじゃない?」
「まさか。妖怪は妖力でなんとか出来るけど、幽霊はムリ。」
「なるほど。力で何とかできたら怖くないんだ。でも、突然妖怪が出てきたら怖いよね。」
「…………別に。」
「もしかして、妖怪も怖かったり?」
「……………そんなわけないでしょ。」
「あっ!待ってよ!」
図星だったようで荒井くんの歩みが早くなる。私も負けじと早歩きをして、帰り道を行くのだった。




