25.ゲームセンターにて
休日。私は無性にゲームセンターへ行きたくなった。これは前触れでもある。私の体に流れる座敷わらしの血が、ゲームセンターで異変が起きると言っているのだろう。
そうと分かれば早速、荒井くんへ連絡する。
『荒井くん。ゲームセンターに妖の狭間が出現するかも。』
直ぐに返信が来る。
『了解。すぐに現地集合。』
たったそれだけ。以前、ショッピングモールへ行ったときもそうだったが、なんというか事務的すぎる。
今さらそんなことを言っても仕方ないのだろうけど。
諦めながら、私は駅前のゲームセンターを目指す。
***
ゲームセンターは駅の1階にファストフード店と同じように併設していた。
荒井くんは既に到着していたようだ。
「おはよう。荒井くん。」
彼は挨拶を返すことなく、そそくさとゲームセンターへ入っていく。慌ててその後ろ姿を追いかけた。
自動ドアを挟むとまるで別世界のように、喧騒が体を包む。
「………挨拶ぐらい返してもいいんじゃない。」
「してもしなくても困らないでしょ。」
「そういう話じゃないと思うけど…。もしかして、それもガラじゃないからしないの?」
「……………さあね。」
私との会話に興味がない荒井くんはためらいなくゲームセンターの奥へと進む。休日だからか、人が多い。友人、家族、恋人、さまざまな関係性の人間が口々に話をしながら筐体の前にいる。
行き交う人々を眺めていると急に荒井くんが立ち止まった。
「行きたいコーナー、ある?」
「え?な、なんで?」
「何でもなにも、君が行きたいって感じるところに妖の狭間が出るからだけど。ここ、ちょっと広いし探すところは絞ったほうがいいでしょ。」
「…………そういうことね。……えーっと。今は、メダルコーナーに行きたいかな。」
少しばかり期待した自分がバカだった。考えてみれば分かるだろう。荒井くんが私と一緒に呑気にゲームで遊ぶなんて、天地がひっくり返ってもありえないのだから。
まぁ、もしそんな日が来たらそれはそれで楽しいとは思うが。
なんて考えながら、メダルコーナーへ向かう。
メダルコーナーにある円形の筐体の周囲には、これまた丸い椅子が設置されていた。それらのグルーブが点在し、筐体からは愉快な音楽が流れる。
耳が痛くなるほどの音楽に思わず目を瞑る。その瞬間、音が僅かに減る。筐体の音楽は相変わらずだが、人の話し声が消えたのだ。
「!妖の狭間に来たみたいだね。………?荒井くん?」
私の前にいた荒井くんが咄嗟に構える。何かと思い、彼の視線の先を見れば、異変はすぐに理解した。
そこには筐体に腰掛ける影があった。私の膝ほどしかない緑色の体。不自然に頭に生えた黒髪。どこからどう見ても妖怪だった。
妖怪はベロベロと手にしたメダルを舐める。
私も荒井くんと同様、身構える。この妖怪がどんな攻撃を仕掛けてくるか、警戒をするのだった。




