21.休み時間の彼
授業を終え、私は1年1組に向かっていた。なぜかというと、1組にいる荒井くんに用事があるからだ。
用事というのはプリントを届けること。生徒会執行部で配られたプリントなのだが、以前の集まりで別のプリントが配られていたらしく修正されたものを届けに行かなければならない。
1組の教室の扉は開いていた。荒井くんは出席番号がはじめらしく、出入り口の直ぐ側に彼の姿があった。
当の彼は机にうつ伏せになっている。まぁ、予想通りというか。正直なところ荒井くんが誰か友人と仲良くしているところなんて想像つかない。
「荒井くん。」
うつ伏せになっている彼の肩を触る。すると、不機嫌そうな面を引き下げてこちらを見る。
「……………何。」
「これ、生徒会で配られたプリント。前に配られたのは間違ってたんだって。」
「あっそう。どうも。」
それだけ言って、再びうつ伏せになってしまう。お礼は受け取ったが、それはそれとしてもう少し世間話でもしたかった。
だが本人は望んでいないようなので、大人しく戻ることにした。
1組の教室を出て3組へと帰る途中。後ろから声がした。
「ね。ね。キミって荒井の彼女?」
声をかけてきたのは制服を着崩し、シャツの中にカラフルなTシャツを身に着けた男子生徒だった。
「ち、違うよ。同じ部活に入ってるの。今日はそれで。」
「へー!だから荒井も話してたんだ!」
「……会話になっていたか分からないけど…。荒井くんってクラスでもああなの?」
「そーそー!アイツ、いつも無愛想でさぁ。オレが話しかけても『あっそう。』てしか返ってこねーの!」
「あははっ。私と同じだ。」
男子生徒は人懐っこい笑みで続ける。
「でも、悪いヤツじゃないと思うんだよな。体育祭んときも手抜かずにやってたし!」
「…………そうだね。私もそう思うよ。」
「だよなだよな!……あっ。そろそろ授業だ。じゃあな!荒井の彼女!」
「違うって言ったのに…。」
金色に染められた刺々しい髪を引っ提げ、男子生徒は手を振る。嵐のように去っていく彼を見送る。
廊下は変わらずジメジメと、ほんの少し湿っていた。上履きをつけるたびにキュッと音が鳴る。
窓の外を見れば小雨が降ってきたのか、アスファルトが僅かに染まってきた。梅雨はまだまだ続きそうだ。




