18.ショッピングモールにて②
「ここだよ。多分。」
3階に到着した私達は、その中でも特に行きたいと感じた衣料品店の場所へと移動した。
その途端、周囲にいた人々が何処かへと消え去る。この現象は覚えがあった。妖の狭間への強制転移だ。
「!やっぱり!」
転移されたということは、妖怪に襲われる可能性が高いということ。周囲を見て、警戒を怠らないようにする。
「荒井くん。妖の狭間で発生する妖怪がどこにいるかってのはわかるの?」
「『前』を使えばね。」
「『前』……あっ。妖力を使う探知用の技…だっけ。」
私の問いには答えず、荒井くんは右手をやや丸め、少しうちに巻いた左手のうえにのせる。そして唱えた。
「『前』。」
すると荒井くんは歩く方向を切り替えて衣料品店の中でも雑貨が置いてあるコーナーに向かい始めた。私も置いていかれないように走る。
「………なんか、無人のショッピングモールってワクワクするよね。」
「あっそう。」
「………………。」
期待はしていなかったが、あいも変わらず彼との会話は壁打ちだった。
荒井くんは私の存在に気にもとめず、雑貨コーナーにある色とりどりの傘を眺める。
「もしかして商品のなかで擬態してたりして…。」
中々妖怪が見つからないのでそんなことを言ってみる。
確証もない、なんてことのない発言だったが、その時、視界の端で傘が僅かに揺れるのを見た。
「!」
そして気が付いた時には傘がこちらへと飛んできていた。鋭い先が私めがけてやって来る。
突然の襲撃に驚く。だが、今日は為すすべがない訳では無い。
全ての指を組み、唱える。
「『皆』!!」
その途端、飛んでくる傘の動きが空中で停止する。
私はちらりと横を見る。荒井くんは何か言うまでもなく、傘へ手をかざして炎を生み出す。
パチパチと、傘は燃え盛る炎に包まれる。
「『皆』練習したんだ!どうだった?うまく出来てたよね?」
「普通でしょ。」
「……………褒めてくれてもいいと思うんだけど…。」
「僕は君の親でも教師でもないよ。」
「それはそうだけど…。………まぁいいや。」
話しているうちに傘は灰となり完全に燃え尽きる。荒井くんの出す炎は随分と高火力だった。
***
妖怪退治も終わり、私達は妖の狭間から出られるようになった。
私は折角ショッピングモールに来たのだから買い物でもしようと思う。
「ねぇ荒井くん。何処か見ていか…。」
念のため誘おうとしたが、肝心の荒井くんの姿はなかった。
「………………。」
彼らしいといえば彼らしいが、釈然とはしない。
だが居ないのをとやかく言っても仕方がないので、私はひとりでお店を見て回ることにした。




