12.もうじき体育祭
大里先生に助言を受けてから、私は写経やトレーニング量をほんの少し減らすことにした。体調と同じく心の健康もまた目に見えないからだ。
そうしてまた今日も学校を終えて帰宅する。鞄へ教材を詰め込み、用意。
「かえでっち!いっしょかえろ!」
隣の席の純麗ちゃんが笑顔で言う。
「うん。……あれ?部活動はないの?」
「きょーは休み!だからいっしょに帰れる!」
「良かった。じゃあ帰ろう。」
2人並んで学校を出る。簡素な住宅街を進み、小さな児童公園の側を通った。
「そーいやもうすぐ体育祭だよねー。」
「だね。っていっても、私はバドミントンしか出ないけど…。純麗ちゃんはリレーも出るんだよね?」
「まーね!」
ここ最近始まった体育祭の用意を思い出す。体育の時間、各々バスケやバドミントン、バレー等々に分かれて練習するのだ。無論、部活動で入っている生徒はその競技に参加してはいけない。
クラス対抗ということもあって、皆のやる気は充分だ。
「ちゃーんと見ててよかえでっち。1位取ってくるからさ!」
「うん。見てるよ。カメラも回しちゃおうかな。」
「おっ!回しちゃって!回しちゃって!ばっちり残してもらいたいし!」
そう言う純麗ちゃんはとても楽しそうだった。
私も行事は嫌いじゃない。浮き足立つ雰囲気にあてられ、仄かに楽しくなってくる。だが、運動は得意でもなければ苦手でもない。故に、純麗ちゃんが羨ましくもあった。
「リレーの練習に、部活動にって、大変じゃない?」
「うーん。まっ、そうだけど。でもさ、大変であればあるほど楽しさも増すじゃん?だからてー抜きたくないかな。」
「……………そっか。良い考えだね。それ。」
「でしょー?」
児童公園から小さな子供の声がする。集まり、鬼ごっこでもしているのか喧騒が耳に届く。
思えば、自分もあれぐらいの頃はがむしゃらに遊んでいた。鬼ごっこであれば、負けは死なんだと思うほどそれはもう全力だった。そんな昔と、どこか斜に構えた今を見比べ、私は少し恥ずかしくなる。
「体育祭、1位になりたいね。」
「ね!!3年の先輩方も、みーんな倒しちゃお!」
「うん。」
そうして帰宅する。自室へ戻り、スマートフォンで検索エンジンを起動した。テキストを入れるボックスには簡単な文字。
『バドミントン コツ』
こんな付け焼き刃は意味がないかもしれない。それでも、全力でやって得られる楽しみとやらが欲しくなったのだ。
私は光る液晶を見つめ、来たる体育祭へと思いを馳せる。




