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前世から愛してる

作者: 瀬嵐しるん


 王都の門を出て、馬車は軽快に進む。コルツァーニ侯爵領へは夕方までに到着の予定だ。それも、この整備された道路のおかげである。



「……ミーニ村の用水路修理はどうなっているかしら?」


 快適な馬車の中、向かいに座る美しき女主人が私に質す。


「もう手配してございます」


「マラッタ町の診療所の新しい医者は見つかった?」


「はい。三日前には赴任しているはずですが、後ほど確認を入れます」


「何か書くものを頂戴」


「ジェラルディーナ様」


 私が咎めるような声音で言うと、彼女は舌を出した。


「貴女は働き過ぎです。せめて移動の馬車の中くらい、頭を休ませてはいかがです?」


「わかったわ」


 彼女は苦笑して、深く座り直すと目を閉じた。



 彼女を初めて見たのは貴族学園の入学式。その瞬間から、可能な限り目で追うようになった。しかし、彼女は侯爵家の跡取り娘。私はしがない子爵家の四男。どうにも身分違いで、近づくことすら叶わない……はずだった。


 私は勉強だけは得意だったので、どこかに文官として潜り込もうと、ひたすら打ち込んだ。その結果、二年生になる時に生徒会長に就任した彼女に誘われたのだ。


「ベルトルド・セッティ子爵家子息、貴方の領地経営学の論文を読んだわ。わたしの率いる生徒会に力を貸してくださらないかしら?」


「は、はい」


 『喜んで』とか『私でよければ』とか、もう少し気の利いた返事をしたかったが、そんな余裕は無かった。



 生徒会は仕事も多く大変なのだが、なぜか傍目には華やかそうに見えるらしい。身分の低い役員は理不尽にやっかまれる。面と向かって悪口を言われることも多いが、すぐに聞きなれてしまい、気にならなくなった。


「打たれ強いのね」


 彼女に、そう褒められた時。


「打たれた覚えが無いのですが」


 本音で答えたら大笑いされた。実のところ、百個の悪口を浴びたとしても、彼女の何気ない一言を聞いただけで、全て忘れてしまう。



「ねえ、卒業後、執事として、わたしの領地経営を手伝ってくれないかしら?」


 一年間と任期が決まっている生徒会を引退した直後、侯爵家の王都屋敷に招かれ、そう切り出された。


「就職先が決まるのは、たいへん有難いです」


「じゃあ、決まりね」


 学園は、あと一年ある。執事科の授業をとれるだろうかと考えていると、重ねて言われた。


「悪いけれど寮を引き払って、この屋敷に住み込んでちょうだい。

うちの執事が放課後、いろいろ教えてくれるから」


 少しドキリとしたが、部屋は筆頭執事さんの隣。お嬢様である彼女とは、学園の往復で馬車に同乗させてもらうだけだ。

 彼女と同じ乗り物は、少しばかり居心地が悪かった。それは、私が抱く彼女への思いのせいだけではない。



 学園で彼女を目にした時、私には異世界の記憶が蘇った。それは、あまりにも生々しく、自分の実体験だとしか思えなかった。



 日本という国での私は、性格も生き方も今と大差ない。ごく平凡な男で、大学を卒業して中規模の商社で営業職に就いた。なんとか一人前の成績を上げられるようになった頃、同期でちらほらと結婚する者が出てきた。


「お前は相手いないの?」


 と訊かれることもあったが、彼女いない歴イコール年齢である。自分は、誰かに恋をすることなんてないのかもしれない、と思ったことさえある。


 しかし、恋とは落ちるもの。


『国民的女優 岩居茅音さんが活動復帰です。

まずは、自伝的エッセイにて、これまでの半生を……』


 信号待ちで顔を上げると、街頭ビジョンに一人の女性が大きく映しだされている。その顔に、文字通り目が釘付けになった。


「……信じられない」


 検索してみると、かの美女は自分の母親と同年代。女優と一般人を比べるほうが可笑しいのだろうが、とても、そんな年齢には見えない。私は愚かにも、自分の隣で微笑む彼女を想像した。もちろん、若いだけの自分が隣に立っても見劣りするだけだと思う冷静さはある。


 女優、岩居茅音は若い頃は連続ドラマの主役で、テレビに出通し。やがて、その位置を次世代に譲り、脇役として活躍し続けた。交友関係が広く、バラエティにも、よく呼ばれたそうだ。ところが、少し身体を壊したのをきっかけに活動を休止していたらしい。

 根強いファンが多く、その後押しもあって復帰を決めたのだとか。とはいえ、病み上がりなので少しずつ慣らしながら活動するつもりなんです……と、本屋に飛び込んで買ったエッセイ本に書かれていた。


 テレビドラマに興味がないせいで、彼女のことを全く知らなかった分、深くはまった。すっかり彼女に魅了された私は、その後始まった雑誌の対談も逃さず読んだ。


『……恋を夢見る頃には、有難いことに売れっ子女優だったから、恋愛はご法度。不満を持つ余裕も無かったんです。ひたすら与えられた仕事に立ち向かう日々。

ふと気付けば三十も半ばを越えていて、結婚はともかく、子供を考えるには少しばかり遅いかもなーと』


 五十を前にして、未だパートナーがいないと公言する彼女。まさか、自分がパートナーになれるなんて大それたことは考えていない。ただ少しでも、彼女の近くで支えたいと願うようになった。

 思いは募るばかりで、とうとう仕事を辞め、彼女の所属するタレント事務所の扉を叩いたのである。もちろん、無鉄砲に行動したわけでは無い。タレント事務所の求人を見つけ、ちゃんと応募して話を進めて行ったのだ。熱に浮かされながらも、私は冷静だったと思う。


 社会人のイロハから教わる必要はないので、その分、有利だったらしい。私はすぐに採用され、同行して仕事を教わった先輩からも及第点をもらえた。


「貴方には岩居茅音さんの担当をお願いするわ。

ずっと同じ人に付いてもらってるんだけど、年齢的にマネージャーのほうが引退を希望してて。

彼について、仕事を引き継いで欲しいの」


 社長に呼ばれて、衝撃の辞令をもらった。ストーカー的転職だったのに、いきなり目当ての彼女の担当だなんて。気を引き締めるのはもちろんだが、それよりも緩みがちな表情筋をなんとかしなければならなかった。



「初めまして、岩居茅音です。わたし、まだまだ身体を慣らしながらだから、あまり気遣いは出来ないけど、よろしくお願いしますね」


 初対面の時こそ前職営業の見せ所。挨拶はしっかり、を心がける。


「間山武と申します。新参者ですので、ご迷惑をおかけしないように頑張ります」


「こちらこそ。オバサンぽくヒステリーとか起こさないように気を付けるわ」


「それはそれで、むしろ見てみたいような……。あ」


 思わず口に出してから、しまったと思う。一瞬、目を見開いた彼女は吹き出した。



 仕事は思いのほか順調だった。営業経験も人脈も生きた。岩居さんは、まだまだ仕事をセーブしていたし、多少の余裕をもって側に居られたと思う。


「岩居さん、大黒堂の黒糖饅頭買っておきました」


「あら嬉しい! 覚えていてくれたのね」


 ちょっとした隙間時間に、彼女の好物を用意するのも楽しかった。わずかな手間で、あの満面の笑顔を間近に見られるなんて、これ以上の至福はない。



 出来るなら、彼女が本当に引退するまで、ずっと側に居たいと考えていたし、おそらく不可能でもなかった。しかし突然、その日は来た。



「渋滞につかまってしまいましたね」


「仕事帰りだから、慌てなくていいのだけが幸いね」


 雑誌の撮影で、二つ隣の県の観光名所からの帰り道だった。高速道路は夕方のラッシュ時間に突入していた。


「岩居さん、お疲れでしょう。少し眠られては」


「運転中の貴方には悪いけど、そうさせてもらうわ」


 彼女は後部座席のシートを倒し、用意しておいた毛布をかけて目を閉じた。


 渋滞は有難くないが、ガソリンの心配もない。時折、ルームミラーで彼女を確認した。……覗き見ではない、様子を気にかけていただけだ。



 それから三十分ほど経った頃、後方で大きな衝撃音が響いた。続いて爆発音。事故が起こったようだ。炎が見え、後ろから次々に車が押し寄せて来る。とても、間に合いそうもない。

 後部座席で眠る彼女を抱いて車から逃げ出すのは、映画の中のスーパーヒーローでもなければ無理だ。


「茅音さん。ごめんなさい、助けられなくて。

私の命が消えても、ずっと貴女を愛しています」


 最期に小さく呟いた。



 ……という記憶を思い出したのは学園の入学式で彼女を目にした時だった。

 また、彼女と巡り合うことが出来た。前世の縁を繋げてくれた神に感謝だ。しかも、それ以上の幸運をつかんだ。執事に望まれたのだから。



 学園の寮から、侯爵家王都屋敷の使用人部屋に移って驚いた。実家の客室の倍以上の広さに、調度は十倍以上の豪華さなのだ。

 仕事を教えてくれる筆頭執事さんは、彼女から「爺や」と呼ばれるほど信頼されている人物。彼女がそうなら、私は更に彼を信奉せねばならない。


 卒業までの一年間で彼女付きの執事としては認められた。教わったのは、主に高位貴族のマナーである。お嬢様のお世話をするなら、エスコートまで完璧にしなくてはなりません、とみっちり指導された。


 ある日、筆頭執事さんが裏庭で盛大に焚火をしているのを目撃した。


「お焚き上げでございますよ。

俗な考えでお嬢様に求婚しようなど、許されませんからな。

最初の釣り書きを丁寧にお断りがてらお返ししているのです。

それを踏みにじるような輩は、こうして燃やしてくれましょう」


 分厚い書類は封筒ごとくべられ、絵姿はむきだしのキャンバス状態でポイポイ放り込まれていた。


「もとは額縁がついていたんですか?」


「ええ、額縁はとても素晴らしいものばかりでした。

中には宝石をあしらったものまでございまして。

中身を取り出しまして古物商に売り、孤児院に寄付いたしました」


「世の中の役に立ちましたね」


「まったくです。俗物を役立てるのも一苦労です」


「そんじょそこらのご令息では、お嬢様の隣は務まりません」


「同感ですな。いや、貴方のような方にお嬢様を託せるのは心強いことですよ」


 ジェラルディーナ様が婚約者を持たない以上、懲りない輩は湧いて出る。釣り書きと肖像画に加え、茶会・夜会の招待状もわんさか。だが、本人が望んでいないことは確認済み。直接、文句を言いに来る者もいたので、侯爵領に移ってからは私が前線に立って、これらを処理した。



 卒業後は彼女と共に侯爵家の領主屋敷へ移った。一人娘なので、将来は女侯爵になるのだ。そこからは全てをサポートできるよう、現侯爵夫妻からも、いろいろ教えていただいた。コルツァーニ侯爵家は優秀な女性が多く育ち、これまでに兄を押しのけて当主の座に着いた女侯爵も何人かいたという。


 多岐にわたる知識や実務を教わった二年間。ずっと忙しかったせいで、大きな不安については忘れかけていた。その不安とは、ジェラルディーナ様がしかるべき方と婚姻した後でも、お側で変わらずお仕えできるのか、ということだ。

 出来れば一生、忘れていたいものだと、叶わぬことを思う。



「こればっかりは断れないわね」


 それは、王城で開かれる夜会への招待状だった。


「午後はドレスを見に行くわ」


「畏まりました」


「貴方も付き合ってね」


「はい」


 と返事しながらも、内心疑問に思う。これまで、ドレスメーカーを訪ねる時はメイドを伴っていたのだ。ここ、コルツァーニ侯爵家の領地にも王都に負けないドレスメーカーが店を出していた。王都の一流店が暖簾分けするタイミングで誘致したそうだ。



 VIPルームには予めサンプルとデザイン画がたくさん用意されている。ソファの後ろに控えようとすると、お嬢様から注意を受けた。


「貴方も一緒に選んでちょうだい。

さ、隣にお座りなさいな」


「お嬢様?」


「命令よ! お座り!」


 犬ですか私は、と思いつつ、ちょっと嬉しい。……ともかく、言われた通りにデザイン画に目を通していく。


「三枚選んでみて」


 大人しく、彼女に似合いそうなものを選ぶ。もっとも、一流のデザイナーが描いたものだから、どれも似合うには違いないのだが。


「うん、悪くないセンスよ」


「ありがとうございます」


「じゃあ、これにするわ」


 お嬢様はその中から一枚を選び出した。


「畏まりました。では、次をご案内いたします」


 店主は笑顔で隣室にお移りを、と案内してくれた。そこに並んでいたのは男性用の夜会服とデザイン画。


「今度は簡単。さっきのに合うのを選ぶだけだから」


「?」


 ここでも隣に座らされたが、選んだのはお嬢様だ。そして、二手に分かれて採寸。……なぜか私もしっかり採寸された。



 そして、屋敷へ帰った後に待っていたのは。


「貴方、ダンスは得意?」


「いえ、あまり」


 学園は貴族がほとんどだが平民もいる。身分が様々で状況が異なるため、ダンスパーティーが行われることは無かった。勉学や武道が優先され、交流会があっても立食などの簡易なものだ。


「じゃ、特訓しましょう」


 お嬢様は嬉しそうに私を引っ張ってダンスルームに移動する。



 夜会当日、侯爵家の王都屋敷で、分不相応に飾り立てられた私は鏡の中の自分が信じられなかった。


「すごいですね、皆さんの力量は。

私のような平凡な者でも、それっぽく見えます」


「貴方はもっと自信をお持ちになるべきですよ」


 彼女付きのメイド長はそう言って、私を諭した。


「さあ、お嬢様をお迎えに行ってください」


 支度の整ったお嬢様は、それはそれは美しくて。城へ向かう馬車の中、思わず訊ねてしまう。


「本当に、私のエスコートでよろしいのですか?」


「あなたは嫌なの?」


「嫌ではありませんが、身分的に差しさわりがあるかと。

どなたか他に適切な方がいらっしゃるのではないかと考えてしまいます」


「……心当たりはなくもないのだけど、ちょっと説得が難しくて」


「……その方を慕われていらっしゃる?」


「そうね」


「でしたら、私が協力させていただきます」


 胸の痛みはあるが、そう申し出た。


「本当に?」


「ええ、本当です」


 さすがに微笑みを浮かべるほど人間は出来ていないが。


「何でも協力してくれる?」


「ええ、何でも」


 貴女が望むなら。


「約束よ」


 彼女は勝利したように、不敵な微笑みを見せた。



 王城へ到着すると、招待客のチェック係に、彼女が何か言付ける。


「ジェラルディーナ様、御用なら私が……」


「エスコートを疎かにすることは許しません」


「申し訳ございません」


 今夜の彼女はいやに強気だ。



 たどり着いた大広間では、案内係が高らかに名を呼びあげる。


「パンタレオーネ公爵家ご令息ベルトルド様、およびコルツァーニ侯爵家ご令嬢ジェラルディーナ様」


 え? 今、なんと?


「さあ、行くわよ」


 考える暇は与えられなかった。そのまま王族への挨拶を済ませたはずだが、ほぼ記憶が無い。彼女に引っ張られるままダンスを始めると、したたかに足を踏まれた。


「痛っ!」


「目が覚めたかしら?」


「……」


「しっかりして。貴方はわたしの婚約者になったのだから」


「は? 婚約者?」


「協力してくれるんでしょう?」


「はい、ですが……」


「いい加減気付いてよ。わたしが好きなのは貴方なの」


「本当に?」


「本当よ。前世から愛してる」


「茅音さん!?」


「気付いているのは自分だけだと思ってた?」


「はい」


「わたしの伴侶を決めるには、爺やが一番の難関なの。

貴方は見事、爺やを味方につけたわ。

それを知った伯父様が、貴方を養子にすると申し出て下さって」


 ジェラルディーナ様の伯父はパンタレオーネ公爵だ。


「そんな、恐れ多い」


「今更怖気づいた? 何でも協力すると言ったじゃない」


「しかし、執事として採用していただいたと思っておりましたが……」


「もちろん、執事も兼任よ。貴方の他の誰がわたしの面倒を見られるというの?

まさか、出来ないとは言わないわよね」


「……はい」


 ああ、私はまた、何て気の利かない返事しか出来ないのだろう。

 けれども。


「貴方の、肝心な場面で不器用なところも大好きよ」


 そしてまた、彼女はどうしてこんなにも、私の想いを煽り続けるのだろう。



 後から受けた説明では、私が何でも協力すると宣誓したことで、全てにゴーサインが出されたのだという。


 最初に、ジェラルディーナ様が私を執事にするという名目で囲い込み、爺やさんが執事の指導がてら為人をじっくり鑑定。これは大丈夫だと判定され、お嬢様の補佐が出来るよう侯爵家で教育を施された。まさか、そんな裏があると少しも気付かなかった自分の鈍さに天を仰ぐ。

 優秀な彼女が跡継ぎになるのは絶対で、だからこそ、皆が彼女の希望を叶えようと動いてくれたのだろう。

 入口を潜った時は、ただの執事だったのに、大広間前で突然、公爵家子息と彼女の婚約者に昇格してしまった。



 そんな怒涛の夜会を無事に終えた数日後。馬車は暮れ始めた陽光の中、領地館の敷地に入った。私は、すっかり眠り込んでいる彼女に声をかける。


「お嬢様」


 馬車はゆっくりと、屋敷の車寄せで停まった。


「ジェラルディーナ様?」


「……う、ん」


 これはまだ眠そうだ。彼女は少しだけ寝起きが悪い。グズグズしていると、一緒に王都から移動してきたメイド長が寄ってきて馬車を覗き込んだ。


「ベルトルド様、抱き上げて運んで差し上げては?」


「え?」


 ああ、そうか。うん、そうだ。皆の面前で、堂々と彼女を抱き上げてもいいんだ。今の自分は、取ってつけただけだが公爵家子息であり、彼女の婚約者なのだから。

 そっと抱き上げた彼女は思いのほか軽い。馬車から出ると、メイド長がささっと裾を整えてくれた。


「お帰りなさいませ、お嬢様。若旦那様」


「……ただ今戻りました」


 使用人の皆が笑顔で迎えてくれる。ドアに向かって歩いていくと、一番奥には領地に移って来た爺やさんがいた。執事は引退して、今後はご意見番として皆を監督するそうだ。



「ただいま、爺や!」


 いつの間にやら私の肩に腕を回した彼女が、元気いっぱいに挨拶する。


「お嬢様、狸寝入りなど、いつの間に覚えられたのですか?」


「うふふ」


 爺やには生返事で、私の肩にそっと頭を預ける婚約者。彼女は元、国民的女優。これからも、どんなふうに手玉に取られることやら。

 困ったことに、それが楽しみでしょうがなかった。


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[良い点] 尊いとはこの作品のことか。 主人公もヒロインも最高でした。 とっても読みやすくとっても面白かったです。
[良い点] シンプルな話だが前提がしっかり話されて理解させられるおかげとても純粋で思い入れが強くなるのでちょっとした幸せがすごく嬉しく感じてこの話だけだと普通の話の前章にもならないプロローグくらいなの…
[良い点] 素敵なお話でした! [気になる点] お互い、どこで気づいたんだろう? 顔が同じだった…??
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