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2. ダンジョン!戦闘!

 アトが先行して中に入っていく。ロアをおんぶした僕が後に続き、松明で周囲の壁や足元を照らしながら慎重に進んだ。


「アト、あまり一人で行かないでくれよ」


「わかったよ」

 アトは素直に頷いたが、その顔は早く先に進みたくで仕方がないようだった。


 通路を抜けると、そこは天然の岩肌でできた小さな部屋になっていた。進行方向にトンネルが空いていて、二股の分かれ道になっている。


「くさーい!カビ臭いね!」


 ロアも楽しくなってきたのか、嬉しそうに言った。僕は慌ててその口の前に人差し指をあて、「静かにしようね」と注意した。僕たちのクエストの目的は、ここに住んでいる魔物を追い払うことだった。この様子では、侵入者が来たことはもうバレているだろうな。


 思った途端、奥のトンネルから魔物たちの鳴き声と足音が反響してくる。ゆらゆら揺れる松明の灯りが、奥の通路から漏れてくる。ああ、まあそうだよね。


「何か来るよ?」


「ゴブリンだね。ロア、一回降りてくれるかい?」


 声と足音の感じから2、3匹と判断する。木が岩肌を擦れる音から、棍棒のような武器を持っていることが予想された。


 僕は気を引き締めた。ゴブリンといえばRPGでは最初の雑魚敵の代名詞だが、実際に目の前にすれば僕のような一般人には恐ろしい脅威だ。


「おいちゃん、ちょっと行って、退治しちゃっていい?」


「アト、むやみに突っ込んではダメだ。彼らは罠や飛び道具だって使うんだから。少し部屋の入り口の方に下がろう」


 僕は気のはやるアトを抑えた。とにかくゴブリンと戦う時は不意を撃たれないことだ。単純な1対1なら人間の成人の方が強い。だが力が弱い分、弱いものが生き延びるための悪知恵を持っていることが多い。


 ゴブリンが姿を現した。予想通り、二匹。平均より少し小さいその姿からまだ若い個体だと思われた。手には松明と、粗末な出来の棍棒を持っている。


 ゴブリンはこちらが見るからに弱そうな僕と、子どもたち二人だけなのを見て、クックと笑い出した。迷い込んだ親子連れだとでも思ったのだろうか。無警戒に、ゆっくりと近づいてくる。


「アト、奴らは油断してるようだ。けれど通路の先から飛び道具が来るかもしれない。こちらまで十分に引き寄せてから、倒そう。ロアは僕の後ろに隠れてて」


 僕が虚空に指を出してつまむ動作をし、開くと半透明の青いパネルが現れた。そこには文字列が並んでいて、そのうちの一つを僕がタップする。すると僕の手に真っ直ぐに伸びた木の杖が現れた。


 これが僕が持っている唯一のスキルだ。そんなアイテムでも99個まで、文字に変換してパネルに保管しておくことができる。僕はこの能力を「二次元パネル」と呼んでいた。


 今、引き出したのは打撃の杖LV2。一般人である僕でも扱える、数少ない魔法の武器だ。軽い力でも、重い打撃となって相手に伝わるようにできている。


 杖を手にした僕に一旦は怯んだゴブリンたちだったが、それを握る僕の非力そうな腕を見てまたニタニタと笑い出した。そしてまた近づいてきたところ、


「アト!今だ!」


「オッケー」


 アトが腰の木の短剣を抜いた。短剣を握るアトの拳に、日輪の形をした白印が浮かんだ。光を放ち、アトの木剣がうすい白の光に包まれる。そのままアトは飛び出すと、瞬く間にゴブリン二匹を打ち倒した。


「あれ、もう終わり?」


 拍子抜けしたように、アトがゴブリンを見下ろした。足でツンツンするが、起きる気配がない。完全に失神している。


「はは、僕の出番なかったな」


 僕は頬を掻いた。アトの剣技は父親譲りで、まだ8歳だというのに大人顔負けだ。当然のように、僕より強い。


 僕はパネルを開いて<まだらのひも>をタップする。魔法のロープで、僕の命令と共に一人でにゴブリンの手足をぐるぐる巻きにした。


「わあ、面白ーい!ロアもやりたい!」


「はいはい、でも、帰ってからね」


 ロアに貸したら僕がぐるぐる巻きになりそうで怖い。


 僕は松明で壁や床を照らしながら、手にした紙に特徴を記していく。昔、パーティにいたときにマップを描くのは僕の仕事だった。我ながら手慣れたもので、あっという間に部屋の特徴を記していた。調べたが、わかりやすい隠し通路や仕掛けは見つからない。もちろん僕は盗賊シーフではないので、凝ったものはわかりようがないが、村の近所の洞窟にそんなものはないだろう。


「この先は二つに分かれてるよ。どっち行く?」


 待ちきれないようにアトが言った。早く先に進みたくて仕方がない様子だ。ロアの肩に乗っている子犬(もどき)のクエちゃんが左の通路に向かって低く吠えた。警戒している様子で、毛を逆立てている。


「確かに左はなんか、変な臭いがするよ」


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