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リア充は絶滅しました

作戦番号二〇二三一

作者: @OhMyBrokenAI

エピソード: 本屋

 静かだ――当然のことではある。とはいえ、この空間には静寂が相応しい。整然と並んだ本棚、手前に積み上げられている本の山、これらに囲まれてお祭り騒ぎができるのであれば、その者は勇者なのであろう。その者を前にするとき、私は魔王として戦わなければならない。はたして勝てるだろうか――いや、二人そろって追い出されるだけだな。


「しかし、誰もいない本屋というのは、ちょっと怖いな」


 仕方が無いこととはいえ、例によって無人なのである。静かであることの原因は、静かに本を吟味している客がいる、という理由ではなかった。残念ながら私も客ではない。ただ、しばらくぶりな本屋なるものを見つけて、ふらりと立ち寄ってみただけだ。見つけるのに、やや苦労した。そんな時代だ。


 客ではないといった。ここでは立ち読みだけしてネットで注文する? 期間限定最安値の電子書籍版を狙う? そんなことはしない。今時は立ち読みですらネットで完結してしまうのだ。スマホで書物を堪能できるスキルは未だゲットできていないものの、タブレットやPCの大画面を前に見開きで書物を堪能できるスキルなら所持している。


 国立国会図書館デジタルコレクションまで存在するのだ。数百年前の貴重な書物を、刻まれた歴史の痕を含めてビジュアル面から堪能できてしまう。こんなことが一介の本屋に実現可能であろうか? 余程光る個性で周りを惹きつける力を維持し続けなければ、許されはしないのだろう。


 それでも、この本屋は今ここに存在している。私と同類なのだろうか? 客など来なくても売りたい本を売る、それを止める権利は誰にも無い――なんだか一冊買いたくなってきた。ただ――たとえばレジカウンターに定価分の現金を置いて行くとして、お店の人が私の意図に気づいてくれるだろうか――そもそも店員はいるのか?


「何もしないよりは良いのか――本でも読みながら悩んでみるか」


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