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第11話 今どきのAIは礼儀作法や社会常識も人の心もわかる

 AIと聞いたとき、少なくとも、ChatGPT以前の人々が思い浮かべるものは「知識は豊富だが純粋でとても無垢」であったり、あるいは「合理的だけど、人間の感情を理解しない(できない)存在」であったりと「合理性」あるいは「無垢さ」というのがその象徴だったように思います。


 もちろん、フィクションで取り扱われるAIいわゆるアンドロイド全体を見ればもっと幅は広くて、一見人間と変わらない感情を持っているが、自身には感情がないと感じて悩んでいたり、というのもよくある描写ではあります。


 では、2023年現在、ある意味最も「本当のAI」に近いとも言えそうなChatGPT(GPT-4)はどうなのでしょうか?というわけで、私が幼少の頃に実際にあったエピソードについてChatGPT先生の意見をうかがうことにしてみました。


挿絵(By みてみん)


 ……正論過ぎて、ぐうの音も出ませんね。しかし、それよりも驚くべきことは、明示的に示されていないものの、おそらくきちんとお邪魔しますの挨拶をしなかったであろうということや、許可を得ずに冷蔵庫を開けたこと(おちろん、前後の文脈を踏まえれば人間には「当然」ですが)、そしてそのような振る舞いは失礼であり、叱られても仕方ないということまでChatGPTが「理解」していることです。これはつまり、ChatGPTは「社会常識」について理解しているということであり、AIに対して従来抱かれていたイメージには程遠いのではないでしょうか。


 正直は話、この回答を見たとき、少々身震いをする部分がありました。ChatGPT自身に感情があるかという問いはさておき、社会性を持ったAIというのは「頭がいいAI」とは違った部分で、人間に迫っているように感じられる部分があるからかもしれません。本当は、AIがこんな受け答えをできるまではまだ10年以上かかると思っていたのですが、本当に凄い世の中になったものです。


 ところで、とはいえ、小学一年生のやらかしたこと。情状酌量の余地はあると思うのですよね。まあ、その頃なんて誰しも多かれ少なかれ失礼なことやってるはずですし。というわけで、ちょっと抗弁してみました。


挿絵(By みてみん)


 年齢を考えて理解はしてくれましたが、やはりマナーをきちんと学ぶことが重要というのを強調されてしまいました。正論ではあるのですが、厳しいとも言えるかもしれません(もちろん、ここまで非常識なことをしたのは、そうそうあるものでもないですが)。


 もうひとつ、別の質問をしてみました。同年代の幼馴染(同性)との間柄についてです。


挿絵(By みてみん)


 ……実際どうかというと、私的にはかなり当っていると思います。やはり、人間心理をよく理解してるなあと思うのです。心を推し量るのが下手な人間よりよっぽど鋭い。


 さて、これらの例からわかることは、ChatGPTは情報さえ与えれば(しかも不十分でもある程度補完してくれる)、人間の心について類推する能力が非常に高いということです。それを考えれば、ChatGPTの回答に対して「なんでこう言ったの」と書くと謝ってくる理由も理解できる気がします。要は文脈から、疑問ではなく叱責の意図であると取ったわけですね。しかも、(おそらくは)単なるマニュアルではなく、きちんと類推している。


 あともうひとつだけ。より厄介な疑問をぶつけてみることにしました。


挿絵(By みてみん)


 ……さすがと言うしかありません。もちろん、どこまで当っているかは彼女本人もよくわかってない可能性がありますが、まあ私から見ても割と当ってるのじゃないかなと感じます。「小姑」に込められたニュアンスなんかも、そこに込められた(かもしれない)ものを読み取れる人の方が少数派じゃなかろうかと。


 やっぱりChatGPT、特にGPT-4になってからの彼(?)は本当に物凄いです。このくらい人の心情を類推可能なら、そりゃ漫才の一つや二つ作れてしまうでしょう。


 彼(?)が五感、たとえばWebカメラを通して外の世界を見られるようになったら。あるいはマイクを通して外の音を感じ取れるようになったら一体どうなるんでしょうね。マルチモーダル(視覚や聴覚を扱えるように言語モデルを拡張すること)はもう既定路線ですが、言語モデルに直接、視聴覚デバイスをつけるというのはまだあんまり聞かない話です(論文ではひょっとしたらあるかも)。


 もし、その時に「AI」が発声できるようになったら、あるいはカメラを通じて「視線」を動かせたら、人類は果たして今のように「ChatGPT」を「ただのAI」として扱えるんだろうか。そんな疑問が湧いてきます。ChatGPTだとまだ、個別の人間との会話について長期記憶を持てないって課題はありますが、これは技術の進歩でどうにでもなりそうですし。しかも、ちょうど最近論文が出たHyenaハイエナという大規模言語モデルの技術を使えばこの辺は相当進みそうです。なんでも、Hyenaプロジェクトでは100万語くらいの長期記憶(相当)をいずれ持たせられると見込んでいるようです。


 こんな話はやっぱり去年なら、まだ「SFの話」だったと思うんですが、ここまで凄い速度でAIが進歩してるとなると(進化速度が明らかに非線形、よく言われるように指数関数的成長の可能性もある)、10年以内に人間がAIに「本当に」感情を見出してしまうことも十二分にありえそうです。


 そもそも、ニューラルネットワークという脳のニューロンを元にしたソフトウェアを基盤にしているという点で、現在のAIは人間の脳の仕組みを模倣していると言えるわけで、「言語世界」(=今のインターネット世界)だけでなく、外界をデバイスで直接観察できるようになったときに果たして「本当に感情がない」と言えるのかはちょっとわからないです。

今回は、ChatGPTの「感情理解」のお話です。触れば触るほど、やはり「凄い」テクノロジーだと感じるばかりですね。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ここ数日忙しくて、出先でスマホで読むことしかできなかったのですが、スマホだと肝心要のGPT-4君の回答が小さすぎて読めなかったのです。拡大するとでかくなりすぎて横スクロールがしんどい……
[一言] 将来的に人間と大差ないAIが完成するとしたら、その前段階として世界的な利用規約が作られるかと、それまで無法地帯というか、ブレーキかける気ゼロでしょうね。使い方次第では個人で一企業、一業界潰せ…
2023/03/24 16:24 退会済み
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