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離して

作者: 伏見

 いい訳-


 男―

 

 もういい、解放してあげる。いや、俺が解放されるんだな。

 すまない。あなたの大事な10年を、一生の間の花のような時間を俺が奪った。

 奪ったんだろうか。

 俺はあなたとのその時間、溶け合い俺たちは一つになって人生を謳歌していた。確かにそう感じたんだ。あなたもそうだったんじゃないだろうか。

 ただ、俺にもう一つの世界があったことは、その時のあなたには知る由もなかった。

 どこまで隠していけるかわからなかった。それは周りの親しい人にまで気づく事がなかった。

 俺は詐欺師になれるなと少し気分が高揚した。

 いや、今となっては俺はあなたや妻や周りの大事な人にとっては立派な詐欺師になっただろう。

 

 あの時、今のこんな状況になるとは露ほどにも思わず、ほんの少しだけの歪みが全ての歯車を噛み合わなくした。

 

 空が夕陽に照らされてオレンジ色に輝いてた。

 そうか。

 結局は、俺の不徳の致すところ、といったところなのか。こんなに他人事のように自分自身を振り返ることができたのは初めてだ。

 絡まりゆくものからやっと解放されたのはあなただけではなかったはず。

 

 女―

 

 ――あなたはまだ勝手なことを言って言い訳するんだ?

 嘘つきね。

 こんなに長くまで来たら解放されても後を引くの、私、わかってる。

 あなたにどん底に突き落とされた時、ショックだった。

 溺れた私が気づかなかったのはあなたの戦略の勝利なのかしら。私はまんまと落とされた。

 うまく、人生を歩めている。そう思ってた。

 もうどうでもいいわ。あなたがどうなろうと今までのこともサッと忘れる。

 思い出しては涙して、あの時感じたすべてを消して行く。

 思い出しても消して行く。

 もうどうでもいい。

 さようなら

 

 男―

 

 ――君は、多分いろんな意味で優越感を感じていたんだろう。ある意味君も共謀犯なんだ。

 それは君も知ってるはず。

 正当化するわけじゃないが…

 もう今となっては愛してたかどうかわからないが、一緒にいて心地よく空気みたいに溶け合ってたのは愛だったと思う。

 愛してるよ。

 

 

 女――

 

 ―もう愛してなんかないわ。

 さようなら。

 

 終

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