マルマとメルメはドラゴンを御所望だ!
看病するものが増えてしまったことで、またも増築をしなくてはならなくなった。
オークに頼んで貯めていた木材をもってきてもらい、急遽家を建てることにした。
「少しだけ、俺たちの家から離しておこう。いきなり暴れられても困る」
家は個室をたくさんつくった造りにしておく。
目覚めて部屋がないとか言われたら困るからだ。
「まさか……30人もエルフがいたとはな。それも女ばかり」
思っていた展開と違ったが、少なくはない情報を得られると思えば悪くない。
かさむポイント。
「思った以上にかかったけど、出ていかれても他の誰かを住まわせたらいいし、安い買い物と思えばいいか」
それぞれ寝かせておく。
ゴブリンとオークたちにはこの建物に近付かせないようにする。
なにせファンタジー二大巨頭の女性犯すマンだからな。
視界にいれるのも今は不味い。
うちのゴブリンとオークは紳士なのでそんなことはしないが、みる人は知らないので、変な疑いをかけてくる恐れがある。
清潔で無垢なみんなが傷つくのもかわいそうだ。
「というわけでお世話が得意そうな魔物知らない?」
「なぜ私に?」
散歩から帰ってきたワイドに質問を投げ掛けた。
「え、紳士だろ?知ってそうじゃん」
「紳士とは無関係です。ですがそうですね……悪魔とかどうですか?」
「だってよ、ラウラ、リノン」
「得意ではありますが、一人では無理ですよ?」
「いやよ。だって面倒じゃない」
ラウラは手数的に無理と言っているが、リノンはそもそもやりたくなさそうだ。
「そうか。新しく悪魔呼ぶか。階級低い方がいい?」
「高い方が後々戦力になるのでは?」
ワイドがそう提案してきた。
「確かに。じゃあ指揮がうまい悪魔で」
適当な想像で召喚すると、優雅なドレスを纏った金髪美女が現れた。
「これは当たりか?」
「いや、外れ」
「え?」
ノアの問いにユウトは即答した。
美女は突然の出来事に困惑していたが、あるものを見つけて、わなわなと震えだした。
「まぁ!ユウトちゃんどこ行ってたの!?」
美女は逃げようとするユウトを捕まえると、ほっぺをすりすりし始めた。
「それにラウラもリノンも!無事だったのね。よかったわ。心配したのよ!」
ユウトだけでなく、ラウラもリノンも捕まってしまった。
圧倒的な素早さに追い付けずにいると、ユウトが死んだ目をしていたことに気づく。
「あー、なんだろな、これ?」
「私に聞かないでもらっても?」
ワイドも嫌そうに返事をした。
「うん、なんか、仲良さそうだし、次行くか」
「メェーメェー」
「あぁ、確かに女性だと侮っちゃうかもな。男の悪魔も必要だな、うん」
なんとなく察していた通り、男の悪魔もユウトを抱きしめてわんわん泣き始めた。
「うんうん、家族って素晴らしい。次はあれだ、世話できそうな人にしようぜ」
召喚する悪魔、みんなメイドか執事でみんな、ユウトを心配していた。
「ユウトファミリー大集合だね。コンプリートかな?ラウラ」
抱きしめられたラウラに確認すると、頷きで返してくれた。
「そうか。後の説明任せたわ、ワイド」
「私ですか?」
「そこで私に振るの?」と困惑した表情を見せるワイドに、ノアは「そうだよ」と笑った。
「やったな、早速出番だぞ。交渉役の」
「……そう、ですね」
嫌な役割を押し付けたワイドには後でなにかあげることにした。
ワイドが焦燥した表情をすると、メルメとマルマがノアの背中をグイグイと押し始めた。
「あれ?メルメ、マルマ?」
「いくの」
「いく」
どうやら二人もノアと同じくてワイドに押し付けるらしい。
マルマとメルメは感情が希薄だと思っていたノアは、初めて行動にでたマルマとメルメに興味をもった。
「今日はどうしたの?いつもなら、ワイドについていくよね?」
ノアの問いにマルマとメルメはお互いに顔を見合わせて、じーっと見つめ合った。
「めんどう」
「そう、めんどう」
意見の擦り合わせが終わったのか、今度はこちらを向いた。
「めんどうだから」
「めんどう」
「そうか。なら、面倒ついでにワイドが好きそうなもの知らないか?」
ノアはワイドの好みのものを聞き出そうとした。
「マルマ」
「メルメ」
「「むぅ」」
マルマとメルメはお互いに自分の名前を出し、じーっと睨め合った。
「うん、二人とも好きなんだね。じゃあ二人が欲しいものはないか?」
「……けんぞく」
「……げぼく」
「うーん、俺でいう配下みたいなものか?それってどうやって用意すればいいの?」
「「けいやく」」
「契約?ちなみになにが欲しいの?」
「ドラゴン」
「蜥蜴ならいるよ?」
「ドラゴン!」
「育成して好きなドラゴンに育ててくれ」
ノアは新たに蜥蜴を召喚して、マルマとメルメに渡した。
「次にまた功績をあげたら、次の配下をあげるよ」
「「むぅ」」
ほっぺをぷくぅと膨らませたマルマとメルメの頭を撫でて許してもらう。
「なにより、ポイントがカツカツなんでね……」
「びんぼう」
「ひもじい」
「貧乏なので、ドラゴンはむりでーす」
「「むぅ」」
感情表現が行動に出ることがわかった。
二人には蜥蜴との仲を深めてもらい、ノアは一人離れていった。
「ユウトも子供だったんだな。ショタだし。これで多少は賑やかになったし。俺は俺でコアの領域を広げておくか」
家に戻ったノアは、これまで伐採で広げていった場所を自分達の拠点の一部に変えていった。
「また、廃墟があるみたいだな。これも全部ポイント還元だな。これで少しは余裕ができた」
余裕できたついでに部屋にソファを設置。
趣のある机も置く。
「これで寛ぎの場の完成。暇になったし、寝るか……」
すやすやと心地よく眠るノアだったが、一人だけ冷や汗をかきながら対処に当たるものがいたことを忘れてはいけない。