悪魔でも蜘蛛には頭が上がらない
羊と話していると、服がボロボロのゴブリンがやってきた。
「どうした?」
「グギャ」
「なに?もう進化できるのか。一日しか経ってないよな?」
「グギャッギャッ」
「……え、もう一回言って?」
「グギャッギャッ!」
「……まじか。あいつ、容赦ねぇな。行くわ」
ゴブリンの話はこうだ。
ユウトが訓練を始めたが、その訓練は常軌を逸脱していた。
死なない程度にボコボコになるまで戦わせ、休憩させる。
それを一日中繰り返しやらせることで進化できる経験をすばやく獲得させたそうだ。
「ユウト、やりすぎじゃない?」
「だめだった?」
「うーん、ゴブリンたちはどう?」
「グギャ」
「ユウトは悪くないか。そうか、なら進化させよう」
ユウトのストイックな訓練では強くなることを実感できたことで、ユウトはゴブリンたちから信用を得ていた。
ゴブリンの進化先には職業系ばかりだったが、ユウトの希望で全員、ハイゴブリンに進化させることになった。
次の進化がホブゴブリンと言われる中型の大きさの鬼になるそうで、時間はかかるが、ゴブリンの中でも厄介な存在になるそうだ。
次の日からはユウトの希望で、四分の一は訓練、四分の一は探察、四分の一は作業、残りは休憩。
というローテーションを組むことになった。
訓練のあとは必ず休憩にして、身体を休ませることになった。
「そろそろ本格的に食べ物を探しに行かないとな」
「ないの?」
ユウトが不思議そうに返事をした。
「あぁ、この辺りに動物も魔物もいないみたいなんだ」
「あら、あんた知らないの?」
俺の疑問にツインテのロリが答えてくれた。
「なにかあるのか?」
「町は都市核があって魔物は入ってこれないの」
「なんだ、それ」
「知らないの?」
ツインテロリが教えてくれたのはこの世界の常識。
都市には必ず都市核があり、結界によって町は守られている。
そして都市核は町を支配する領主のみ操る権限があるそうだ。
「都市核ね、コアに飲ませるか」
ノアは家にツインテロリを連れてコアのもとへ訪れた。
「都市核はどの辺りにある?」
「町の中心だと思うよ」
「そうか。コアよ、都市核もろとも、この町を飲み込め」
コアに指示すると黒い液体があふれでて、都市核を求めて動き出した。
「これで大丈夫だな」
「飲み込んだらここも襲われない?」
「制御を奪うんだ。祠周りは安全なままだ」
少しするとコアから反応があり、都市核を見つけ、乗っとることに成功したらしい。
数百年により稼働するための魔力が補充されていなかったこともあり、すんなり手に入れることができたそうだ。
「これで食料改善だな」
「ええ、そうね。ここの魔物が今の戦力でもどうにかなるものだったら……」
ツインテロリが意味深なことを言ったが気にしないことにした。
フラグは気にすると自ら引き寄せてしまうものだから。
数日過ごしていると、ツインテロリの予想が的中した。
「グギャア!」
「敵襲か?」
「グギャグギャ!」
「なにぃ!臭いゴブリンが現れただって!?皆殺しだ!」
身体を洗わない不潔ゴブリンが現れた。
蜘蛛たちに作らせた服が全員にまわったことで、ここに腰布変質者ゴブリンはいない。
「いいか、ここに近付かせるなよ。強かろうとお前たちは厳しい訓練をしてきた。負けることは許さないぞ」
ユウトを経由してゴブリンたちに指示を出すと、戦況を見に行くことにした。
拠点の壁から外をみると、そこには剣をもった清潔なゴブリンが不潔ゴブリンを圧倒していた。
武器をもっていても粗末で、簡単に壊され、不潔ゴブリンたちは清潔なうちのゴブリンの糧となっていった。
向こうには上位個体がいるらしく、そのたびにユウトが相手をしていた。
ハイゴブリンたちでも勝てないほどの上位種だ。
ユウトもこれでさらに強くなるはずだ。
戦いは一日中続いた。
苦戦はしなかったものの、相手の数が多すぎた。
こちらにも被害がでた。
「大丈夫か?」
「問題ない」
「そうか」
ユウトがボロボロになって帰ってきた。
主に服だけだが。
服を作った蜘蛛たちが心配そうにしている、服を。
「頼む」
「……!!」
「ごめん」
「……!」
「直してくれ」
「…………」
ユウトが蜘蛛たちに謝りながら服の修復を頼んだ。
最初は怒っていた蜘蛛たちも、素直なユウトを許した。
戦場はあまりにも悲惨な状況だった。
傷ついた清潔ゴブリンたちは肩を貸して怪我人を運ぶ。
敵ゴブリンの残骸は臭くて食えたものではない。
「うーん、あ、コアに食わせるか」
コアがある部屋に向かい、死体を飲み込ませる。
「これで綺麗になるはずだ」
「ノア様、斧が多数壊れてしまいました」
「教えてありがとな」
ロリーズが一人、ショートロリが報告してくれたので、お礼に頭を撫でてやった。
「えへへ」
かわいい。
「それはあとでコアに食わせるから、どこかに一ヶ所にまとめといてくれ」
「はいです」
「頼んだ。そういえば、名前は何て言うんだ?」
「リノンです」
「もう一人は?」
「ラウラです」
ツインテロリがラウラ、ショートロリがリノン。
「そうか。リノンありがとな。ラウラにも伝えてくれ」
「はいです!」
リノンが嬉しそうに出ていった。
「俺も戦利品の確認に行くか」
藁ベッド10(120)ウルフ50(3万)ドックフード10kg(1万)
騎士ロリ悪魔2(2万)士爵ショタ悪魔1(3万)
ゴブリンの死骸たくさん(+30万)
合計31万7140ポイント 残り約109万ポイント