ロリコンなら悪魔に魂を売ってでも罵られたいはずだ。よし、俺は親友の魂を生贄にするぜ
目が覚めると知らない天井ではなく、床があった。
「寝相直らないかな……」
寝てる最中にベッドから転げ落ちたらしい。
「さて、今日は戦力増強だ。頑張りますか」
家をでて最初に向かったのは風呂場だ。
実はここには自分専用の風呂がある。
そこで顔を洗って歯磨きを済ませ、ゴブリンたちが起きるのを待つ。
寝たのは夕方なので、早く起きてこれるはずだ。
待っていると続々起きた配下たちが集まってくる。
来たものから役割を決めてその場所に集合、あるいは作業にうつってもらう。
探索部隊とバケツリレー部隊には魚をとってくるように言っておいた。
魚は今日のご飯になるので、多ければ多いほどいい。
地ならし部隊には川からの支流を作ってもらうことにした。
川へ行くのが面倒だからだ。
終点には枯れた池があり、そこに繋げてもらう。
池は石で覆い、柵をつけて落ちないようにする。
池からは風呂に繋げて、スライムが吐き出した汚れを回収して、再び川へ向かうようにした。
全員に役割分担を終えたら、訓練場に向かった。
「お前たちの戦力がどんなものかはかるために戦ってもらう。なにか聞きたいことはあるか?」
「グギャッギャ!」
「なに?ステータスをみろ?そんなものあるのか?」
「グギャ!」
「よし、レベルの高いもの順に並べ」
そうすると、先に召喚したものほど強かった。
「作業中でもレベル上がるんだな。戦ったらそっち方面に伸びるのか?」
「フモゥ」
「わかった。なら、進化するまで訓練だな。レベル10で進化みたいだし、強くなれば作業効率も上がるだろう」
訓練は簡単な組み手から木刀や木槍を使った戦いだ。
半数は訓練、残りは作業というローテーションを毎日行うことが決まった。
新たな施策が始まったところで、少年は気づく。
「俺の名前なんだっけ?」
そこで初めて、自分とはなにかという疑問が浮かんだ。
女神に連れてこられて、生活力を高めた。
戦力も集めた。
自問自答を始めるには遅いが、彼本来の雑さがこの状況を生み出した。
「うーん、思い出せないな。まぁいっか。パッと思い浮かんだ。ノアって名前を名乗るか」
雑なので、名前に執着はなかった。
少年はノアを名乗り、すれ違ったゴブリンたちに名前を覚えさせていった。
「あーっ、女神に旅に出ろって言われてた気がするけど……強くなってからでいっか」
自己完結。
「さーて、なにをするかな」
やることを思い付かないノアは配下たちにやることはないか聞いてくる。
「蜘蛛くん、なにかない?」
「……!」
「服か、大事だな」
「…………!」
「なに、つくってくれるのか?よし、任せた」
蜘蛛たちはゴブリンたちの服をつくることになった。
「羊たちはなにかない?」
「メェーメェー」
「犬?」
「メェー」
「なるほど、ゴブリンたちと行動させて移動速度をあげるのか。頭いいな」
「メェー」
「わかったわかった。褒美に藁ベッドな」
狼まで召喚すると肉が必要になるが、そこらへんは狩りに行かせればいいだけの話だ。
ウルフたちの大きさは2メートルほどあった。
フサフサとの毛は手入れが行き届いておらず、あまりきれいな狼とは言えなかった。
やはりウルフたちも総じて臭いがあれだったのでゴブリンたちに洗わせた。
帰ってきたウルフたちはしっぽをパタパタと振って擦り寄ってきた。
「ウォン!」
「え?お腹すいた?はやくない。まじか、どうしよ。狼だし犬と変わらんよな?」
ノアはドックフードを召喚した。
明らかに落胆をみせたウルフたちだったが、食べてみたら旨かったらしい。
満足げに狩りに出掛けた。
残されたノアは次の行動をすることにした。
「こうも指示する人がいないと、各所に俺が出向かないといけないよな。知能が高くて人型の魔物いないかな?あー、悪魔とか」
そうと決まれば、召喚だ。
「悪魔ってあれだろ、執事が似合う奴だろ。でもあんまり強力なのは育成するのにつまらんから、弱い奴だな」
召喚したのは騎士爵位級の悪魔だ。
悪魔は貴族階級で強さが決まるらしい、羊情報。
騎士なのに最弱とは如何に。
「……ロリだ」
出てきたのはエレガントなワンピースを纏った少女二人だった。
一人は金髪のツインテールの生意気そうな少女で、もう一人は黒のセミロングの大人しげな少女だった。
印象的だったのは頭に生えた羊のような曲がった黒い角だ。
「え、いきなり召喚してそれはひどくない?」
「……いい子いい子」
「お、おい。撫でんな!」
どうやら爵位が低いと年齢も低いらしい。
ロリ二人に合わせてショタ一人も召喚できた。
ショタは貴族らしく高級そうな服を着ていた。
彼は黒に金のメッシュの入った少年で、ノアよりも少しだけ身長が低かった。
「ロリーズはゴブリンとオークに指示だしを頼んだ」
「指示って?」
「木を伐ったらここにもってきてとか、道を作ってとか。まぁてきとーによろしく」
「そんなんでいいの?」
「おっけー」
最初から疑いをあまり持たず、言われたことをすぐに理解した。
ロリーズはトテトテと歩いてゴブリンたちがいる方へ向かって行った。
残ったのは金メッシュの少年だ。
「君は?」
「ユウト」
「そうか。強い?」
「そこそこ」
「訓練頼める?」
「どれくらい?」
「強くなればなんでもいいよ」
「わかった」
ショタ悪魔はユウトと言った。
ロリーズは名乗らなかったので、知らない。
あとは勝手にやってくれるだろう。
「あっ。魚取るなら皿いるよね。どうしよ。木でつくればいいか」
運搬された木を皿にしていく。
家もそうだが、材料さえあればポイント消費はない。
非常に便利だが、質は普通なので、良いものができるわけではない。
いずれは自分達で作れるようになりたいところだ。
しばらく羊と情報交換をしながら一日を過ごし、また次の日も羊と情報交換を行った。
ちなみに魚は取れなかったので、その日は果実となった。
ウルフだけはドックフード。
ウルフじゃなくて実は犬なんじゃないか、とノア達の中では密かに議論されている。