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ゴブリンが不潔なら洗えばいい

 ある薄暗い祠にそれは現れた。


 最初は小さな光だったが、やがて大きな光となり、それは顕現した。


 現れたのはまだ幼さの残る少年で、彼はそこがどこか理解しておらず、辺りをキョロキョロ見ていた。


「ここは……?あぁ、そうか。ここが彼女が言っていた世界か」


 少年はまた知らぬどこかへ来てしまったのだと思ったが、瞬時にそこがどこか理解した。


「暗いな、明かりはないのか?」


 辺りをくまなく探るがそこにはなにもなかった。あったのは祠だけ、そこには女神を彷彿とさせる像が置かれていた。


「ここは彼女のいう教会?いや、金にがめついと言っていたな」


 祠を教会と勘違いしそうになるが、腐っている教会がこんなことをするとは思えなかった。


「まぁ、いいや。まずはここがどこかを確かめよう」


 少年は薄暗い洞窟を進み、光のある場所を探し求めた。足場の悪い洞窟を進んでいく。暗いと気が病むが、彼は慣れていた。


「あそこは明るいな。言ってみよう」


 小さな光を見つけ、それを目当てに進んでいく。そして、開けた穴を見つけ、潜ると、そこには家が建ち並んでいた。


「やっぱりそうか」


 少年はある確信を得た。


 実は祠は手入れが行き届いておらず、苔が生えていた。たどり着いた家はどれも廃墟と化しており、植物に絡まれていた。


「ここは滅びた村か、いや、町だな」


 偶然にも町からスタートというわけではあるが、人は住んでいるようには思えず、危険はないが人気もない。いいのか悪いのか判断に困る位置だった。


 少年は辺りを歩き、人の気配を探した。しかし、人どころかここ数年どころか何十年は人が住んでいないだろうと、確信できるほど、街は荒んでいた。


「現地人には会えずじまいか。けど、俺の能力ならむしろ好都合か」


 少年は誰もいないことを確認して、地面に手を置いた。


「ここをダンジョンとする。コアを生成せよ」


 地面に見えない円上のグリッドが刻み込まれ、それが浮かび上がると町をドーム状に覆った。


 少年が手を置いた場所に台が出現し、その上に小さな球体が現れた。


「まずはこの町を拠点に生活できる程度になろう。町の廃墟を全てダンジョンポイントに変換」


 少年が命じると、小さな球体から真っ黒な液体が放出され、町の地面を覆うと、泥に沈んでいくように廃材が飲み込まれていった。


「へぇー、歴史的建造物だったのか。いや、過去の遺物か。す、数百年前に滅んだ国の町だったのか!なんてところに俺を召喚したんだよ!」


 人は全く住んでいないという情報を追加で手に入れられたが、現地人との出会いが遠退いたことだけは確かだ。


「まぁいいや。まずは生活力だ」


 ダンジョンはこの世界では洞窟や地下空洞にあるものだ。しかし、彼は空間を統べるだ。洞窟以外に創ることができる。


 理屈や常識がこの世界に当てはまらないのは当たり前。なぜなら彼は元々住む世界が違い、神様によってあらゆる恩恵を与えられた存在だ。


 なによりこの世界のことに関しては完全なる無知だ。常識を知らず教養どころか、教えてくれる人が近くにいない。


 彼がやることに関しては彼がルールなので、すべて常識の範囲内の事柄でしかない。


「ダンジョンポイントは100万か。さすが過去遺跡。いきなり贅沢だが、家を建てる。ショップみたいなものはないのか。あぁ、なるほど。俺が想像したものを召喚するのにいくら使うかってので出てくるのか」


 つまり、商品が陳列されてない店に行って、欲しいものを言う。あれば買えるしなければ買えない。欲しいものを買うときに初めてその値段を知ることになる。そんなシステムだ。


「家は平屋で……うーん、材料があれば安く済むのか。なら、まずは労働力だな。ファンタジーお馴染みのゴブリンを呼ぶか。お、こっちの世界にもいるのか。じゃあそれを20体。一体100ポイントか。安いねぇ」


 少年はその場にゴブリンを召喚した。ゴブリンは耳が長い緑色の小人たった。装備品は粗末な腰布だけ。決して強そうに見えなかった。


 少年は彼らを見て、開口一番にこう言った。


「臭いから、川見つけてきてくれない」

「グギャ」


 少年の指示にゴブリンたちは不思議そうにするが、素直にしたがった。


「三人一組で行ってきて。残りの二人は町の端にある門に立っててくれ」

「グギャッギャ」


 ゴブリンたちが三人組で出けていくと、少年は頭をかきながら次の策を練る。


「川の位置か。なら、鳥が欲しいな。なにがいる?あぁ、そうか。俺が想像しないといけないのか。なら、鷹はどうだ?なに、魔物と動物でいるのか。ここは魔物一択だな」


 ゴブリンたちを頼りないと思っているわけではないが、手段は多い方がいいとばかりに新たな魔物を召喚する。

 どうやら、選択肢が複数ある場合、情報としてどんなものなら召喚できるというヒントが現れるようだ。


「ホークねぇ。英語表記は魔物、漢字は動物ってか?まぁいいや。ホークは10体だな。四体はここに近付くものがいないか調べてくれ。六体はゴブリンと合流して川の捜索。見つけたら報せてくれ」


 空と地上からの捜索隊をだし終え、やることがなくなった少年は生活に必要だと思うものを召喚していった。


「グギャッギャ」

「ん?もう見つけたのか?」

「グギャ」


 どうやらゴブリンたちは川を見つけてきたらしい。


「他のゴブリンたちも集めて川にいってくれ。この袋の中にある石鹸で身体を洗え、それからタオルで拭くんだ。いいな?」


 少年は召喚した袋の中に石鹸を詰め込み、もう一つの袋にタオルを入れてゴブリンに渡した。


「グギャッギャ」


 ゴブリンたちは頷きながら、仲間を呼んで川へ身体を洗いにいった。


「頭が悪いのかと思っていたけど、案外頭のいい奴らなのかもな」


 ゴブリンたちを微笑ましいと思いつつ、次の作業に入ることにした。


「作業をするにしても結局いるのは労働力か……ええい、めんどくせぇ、ゴブリン追加で80体召喚じゃボケぇ!」


 追加で召喚したゴブリンに石鹸とタオルを渡した。


「まずはその臭いのをなんとかしてこい」

「グギャ!」


 ゴブリン元来の体臭かは別として石鹸で磨いとけばなんとかなるだろうと、少年は考えた。


「欲しいのは木だけど、そこらじゅうに生えてる。ゴブリンたちにやらせるとして、斧がいるのか。これは20本だな。あとは草刈りをさせるための草刈り鎌が20本、それから道を作るのと地ならしするためのスコップが30本。探索要員に剣30本。どれも素材が安価な鉄にするか」


 少年は思う、鉄が安い。もしやこの世界ではもっといい金属がいくらか存在するのではと。


「ゴブリンたちが帰ってきたら、早速行動開始だな……」


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