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万年Fランクハンター

「ギ、ギルマス」

「これは何の騒ぎだ」



 ギルドの二階から騒ぎを聞きつけて降りてきたのだろう。

 この町のハンターギルド長であるグリンガルが、立派な顎髭を揺らしながら俺たちの方へ歩いてきた。



「なんだ……またユーリス。お前か」

「またって何ですか」



 俺はグリンガルの言葉に納得がいかず食い下がる。


 一人でゆっくりと暮らせればそれで満足だった。

 なのにそれをグリンガルが無理やりパーティに入れさせたせいで、青竜の鱗との確執が出来てしまった。



「そもそもギルマスが悪いんですよ」

「何だと?」



 グリンガルが俺を睨めつける。

 どうやら俺の言葉が気に入らなかったようだ。



「俺はずっと一人で良かったんです。なのに無理やりパーティを組めって言うから」

「……お前、ハンターになって何年目だ?」



 グリンガルは怒りを押し殺したような声でそう言った。


 たしか俺がハンターになるためにギルドに登録したのは13歳の時で、今は18。

 つまりもう5年も雑魚狩りを続けていることになる。



「たしか……もうすぐ5年目になりますけど」

「ハンターランクは?」

「……Fランクです……」

「5年もハンターを続けて、未だに最低ランクのハンターなんてお前くらいだぞ」



 ギルド中からどっと笑いが沸き起こる。

 どの笑い声も馬鹿にしたような色が混じっていて、俺は憮然とした表情を浮かべた。



「Eハンター以上から受けられる依頼は最低でも二人以上で受けなければ危険な仕事も増えてくる。だからギルドはEランクへの昇格の最低条件として二人以上のパーティを組むことと決めているわけだ」



 ハンターになる時、その話は聞いていた。

 そして大抵のハンターは数ヶ月も経たないうちに仲間を見つけ、Eランクへの昇格試験を受けて上がっていく。

 早いものは一年以内にDランクに駆け上がる者もいるとか。


 つまりFランクの依頼は、駆け出しも駆け出しの子供のお使いみたいなものだと誰もが思っていた。


「僕は今までもずっと一人で何の問題なくやってきたんですよ? Eランク依頼だってこなせる自信はあります」

「お前はFランクの討伐依頼ばかりやっているからEランクでも楽勝だと勘違いしているんだ。Eランク以上の魔物は、Fランクの雑魚魔物とは格が違う」



 規約は変えられない。

 Eランクになるためには、最低でも仲間が一人以上必要だ。

 何度も何度もグリンガルはそう俺に告げる。 



「だから親切心で【青竜の鱗】を紹介してやったというのに、俺の顔に泥を塗りやがって」



 親切心か。


 でも俺は知っている。

 いつまでたってもFランクから上がらないハンターを所属させてるなんて恥だと愚痴っていたことを。

 そして隣町のギルマスからそのことを馬鹿にされていることも。



「はぁ……それはすみませんでした。でも俺は誰かと一緒に何かをするってことは苦手で」

「じゃあお前は一生Fランクのままだな! おい、バゴン」

「なんですかギルマス」



 どうやらグリンガルは俺を説得することを諦めたらしく、踵を返すと背中越しにバゴンを呼んだ。



「ちょっと上に来てくれ。相談したいことがある」

「わかりました」



 それだけ告げると、二階に向かう階段へ歩いて行く。

 階段の側では僕の方を心配げな目で見ているシャーリーがいて、目が合ったがすぐに俺はその目を反らすとグリンガルに声を掛けた。



「あの、俺はもう帰って良いですか」

「さっさと帰れ!! お前の顔を見てると胃がムカムカしてくるっ」



 そう怒鳴るように返事をし、階段をドンドンと音を立てて上がっていくグリンガルを見送る。

 彼の後をバゴンが着いていく。



「ギルマスを怒らせるとは馬鹿な奴だ」

「まったく。こんな疫病神と一緒の空気を吸っていたくないからさっさと帰ってくれ」



 残った他の青竜の鱗メンバーは、若手の数人を連れてギルド奥の酒場の方へそう吐き捨てるように俺に言い放ってから去って行く。

 俺はそれを見送ってから一度だけ二階に続く階段に目を向ける。



「ギルドで最高ランクのハンターを呼びつけるなんて……何かあったのかな」



 俺は少しだけ疑問に思いながら、考えても仕方ないとギルドの外に出たのだった。



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