自家製魔道具作成開始
シショウが次の町へ向かう旅に着いてきてくれる。
そのことが嬉しくて、俺は加速魔法を掛けたままスキップで町に戻った。
途中すれ違った人たちの奇異なものを見る目も気にならない。
自重せず走ったせいで、町にたどり着いた時はまだ昼前で。
午後から勤務のはずのギリウスはまだ門には居なかった。
なので無愛想な別の門番に入門証を見せて中に入る。
この入門証が使えるのも、あと三日もないのかと少しだけ寂しく思いながら長屋へ向かう。
今日はこれから収納魔道具の中に仕舞ってある手持ちの材料を使って、世話になった人たちへの餞別を作る。
俺は部屋に入るとまず封鎖魔法を使って部屋の中の音や熱、その他諸々を外に漏らさないようにした。
そして収納魔道具から鍛冶道具や魔方陣を描くために使う道具などを取り出し、机の周りに置いていく。
「さて、大家さんとフェリスとギリウス……あとシャーリーさんかな」
この町に来て三年は経つのに、ある程度会話をしたことがある人がそれだけしか居ないことに驚く。
と、同時に自分のコミュ障ぶりに落ち込み掛けてしまった。
「いやいや。もう落ち込んでいる時間は無い」
俺は一人一人の姿を頭に浮かべながら、それぞれに手渡す餞別は何にしようかと決めた。
そこからは早かった。
部屋の中に鍛冶の熱や音が響き、見る人が見たら目玉を飛び出して驚くであろう魔法陣を何個も重ね合わせ。
俺はその日眠るまでに全てを作り終えたのだった。




