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【3】MMORPGに最強TS美少女で俺が転移した件について。(味噌タラコパスタヴィクトーリア)

 気付いたら森の中に、一人立っていた。


「なんだこれ」




 平日にのそのそ起き、日課の自分磨きを真昼間から決め込んでマッマが買い置きしてくれた赤いたぬきのカレーラーメンを食べる。追い焚きのボタンを押した後部屋に戻り自分磨きとツイッターで自分語り、もといひきこもるもの〜偽りのキャリアウーマン〜の皮を被せてから昼風呂に入った。クソリプ送ってきた奴はブロックしておいた。


 風呂から上がり即PCの前へライディング、一息つくために軽いジャブとして自分磨きを敢行する。賢者のような心持ちで親の顔より見たMMORPGを起動、さーて今日はこの銀髪赤目の巨乳キャラで行こっかなと選択した瞬間眩しい光が俺を襲ってきた所までは覚えていた。ズボンは脱いだままだった。


「なるほど?」


 そよそよと長い髪を撫でる風、ざわざわと静かに流れる木々が自分を囲んでいる。胸を揉んでみたり手をにぎにぎしてみたり髪の毛触ってみたり胸揉んでみたりした結果、


「MMORPGTS転移じゃん」


 と結論付けた。


「マジかあ……何か出来るかな、ステータス!」


 サブカルでクッソ擦られたセリフを自分が吐く事になろうとは、なろうだけにな!笑えよ。


「おおお」


 ふぉんと半透明の画面が出てきた、ゲームで死ぬほど見たブツだ。


「どれどれ」


 俺がやっていたゲームは……まあタイトルはどうでもいいから省くが無難なMMOだ。剣士やら魔法使いやらの職業があって依頼こなして魔物倒してゴミみたいな確率の見た目装備ガチャ引いてみたいなシンプルなやつ、ぶっちゃけ過疎ってた。


「まあ武具そのものがガチャじゃないだけマシか」


 ピンピンピンと画面をいじる、うーん本当にそのまんまだ。カンストしたレベルにクローズドベータユーザー限定の見た目装備以外は全て揃った武器防具、あるあるな有料回復アイテムがズラリな消費アイテム欄にファストトラベルまで。


「出せんのかな、ほい」


 何故かデフォの皮装備だったのでオキニのふわっとした真っ黒のワンピースを取り出す、装備ってボタンもあったけど出せるか確かめたかった。


「おおお、出た」


 無から黒く上品に金の刺繍が施された童貞が大好きそうなワンピースが出てきた、ってどうやって着るんだこれ。


「ああ被るのか、…ってこの皮装備どうやって脱ぐんだよ」


 10分ほど悪戦苦闘して皮装備を外せた、胸でかすぎだろ。キャラクリした奴頭おかしいんじゃねえの?


「このドスケベボディがよ、あとでたっぷりお仕置してやる」


 ワンピースを被る、髪がさっきから邪魔だったからこちらも童貞が好きそうな黒いシュシュでポニーテールに。


「えっと鏡はっと、おおクッソ美少女」


 風でふわふわ広がるワンピースを着た銀髪ポニテの赤目美少女が立っていた、やべぇよ絶対ナンパされちゃうって。


「じゃあ次は定番のアレだな」


 木の前に立ちかるーくパンチ、白い細腕じゃあぺちっと当たって終わり…とはならず。


『ボキバキメキメッシャア!!!!!』

「ぎゃあああ!!!」


 ものすごい音をたてて吹き飛んでった、やべぇよやべぇよ……


「じゃあ次は、『ファイア』!」


 インフレに置いていかれ廃人には牽制にも使われず、初心者には救済ブーストで会得を通り過ぎそんなしょぼいエフェクト存在したんだとスレで言われてしまった魔法を唱える。


『ゴウ!!!』

「うひゃあ」


 手から飛び出した炎が絶賛放送中のひぐらしリメイクのタイトルみたいな音を出しながら木々を消し飛ばして行った、となりのト○ロのトンネルみたいになっちゃったよ。どうすんのこれ。


「最強じゃん!勝ったなガハハ!!」


 気分は有頂天、頭の中はラブホテル。略して有頂天ホテル。自堕落に毎日を送ってた引きこもり生活とはもうオサラバじゃい。よーしこのまま街にでも出てチヤホヤされちゃうか!今!俺のバラ色の人生は再出発した!






「はい次の方」

「持病の痔が酷くて」

「『ヒール』はい次」

「明日、お布団ちゃんと干せるかしら。お天気かどうか占って下さらない?」

「『転移。対象、猫』」

「にゃーん」

「ヒゲ撫でてないし大丈夫です、はい次」

「ぼ、僕男なのに胸出てきちゃってさあ。これ何かの病気じゃn」

「痩せろピザ、次!」

「よっ、ロネ。上手くやってる?」

「あっ、出たなエセ優男。よくも騙しやがって」

「お前みたいなバケモン街に入れてやってるだけでも感謝しろエセ美人」

「は?この顔と胸が見えないんか?正真正銘美人やが」

「口調と性格が終わってんだよ、胸なら触ってやらんでもない」

「『ファイ…!』」

「やめろ!辺り一体消し飛ばしたいのか!」

「もがもが」


 手で口を塞がれてしまった。こいつは王都のお抱え魔術師、名前をルックと言う。


「ぷは、何すんだ」

「こっちのセリフだ」


 最強の体を持ちウッハウハで世界を飛び回ったが1ヶ月で飽きた、馬車は盗賊に襲われないし呪いにかけられた王女様だって居ない。探せど探せど魔王もいなけりゃ魔神もいないこの世界ではどう考えてもオーバースペックだった。


 1週間前、最初の王都に転移し暇つぶしで冒険者ギルドなるものに入ったら身体能力テストとやらをさせられた。魔力測定水晶はぶち壊し試験官の剣は叩き折ってギルマスを気絶させていたら国からこいつが派遣されてきたのだ。


「もう飽きたわ、俺1人で勝手に魔物狩ってこようかな」


 ここで大人しくしてろと言われボロっちい布で張られたテントっぽい店に押し込まれた、魔法やらで人々の役にたってろと言われする事もないし続けていたが流石に飽きる。内容もクソだし、果物の皮が硬いから剥けって言われたときは禿げそうだった。


「そんなこと言ってると全世界で指名手配されるぞ?「魔王が現れた、顔はこんなんです」って似顔絵付きでな」

「世界を相手にしても勝てるし」

「やめろ」


 名前はそのままキャラ名のロネと名乗っておいた、もっぱら魔女やら魔王やら呼ばれてるけど。


「あーあ、転移縛って世界をゆっくり旅でもしよっかな」

「困るな、これでもこの施設はそれなりに役に立ってるんだ。主に若い男からの意見だが」

「胸ばっか見てくるんだよなあ、目的が露骨すぎて苦笑いも出ない」

「揉むな揉むな」

「それで何で来たんだよ」

「監視だ監視、なんの意味があるのかさっぱりな奴をな」

「体のいいサボりか」

「そうとも言う」


 正直なヤツ、外に出て行列に今日は終わりだと告げる。


「あらら、やめちゃうの?」

「気分じゃなくなった、メシ食いに行こメシ。もう暗いし」

「いいぞ」


 ここに来る住民はくだらない事で相談に来るくせに微妙に距離を置いている、チートパワーも恐れずつるんでくれるのは今の所コイツだけなのでそこそこ助かっている。しかしなんで平気なんだろ。


「なあお前俺が怖くないの?」


 聞いてみた。


「は?何が?」

「ほらこういうのとか」


 バシュンと遥か遠くの山に向けて手から光線を出した、少し遅れてカッと光が。再度見ると半分くらい山が削れていた。


「怖いです」

「じゃあなんでつるんで来るのさ」

「そりゃあカワイイ女の子連れてるとこう世間体が最高にな」


 手のひらに光を…


「やめろ、嘘だから。ここでそれをぶっぱなしたら街が吹き飛ぶ」

「はよ言え」

「うーん…………普通に男友達っぽいから?」

「なんかふわっとしてんなあ」

「口調も態度も性格も女っぽくないし付き合いやすいんだよな、根っから悪いやつじゃあ無さそうだし怖くなんてねえよ」

「さいで、もういいや」


 地味にうれしい、前世(?)でもこんなこと言ってくれる奴なんて居なかった。


「おいおい照れんなって!」

「照れてない、ねじ切れろ」

「どこがだよ」




 カントリーマアムの袋に手を突っ込んで取り出したらどっちもココア味だった時みたいな微妙な気分のまま酒屋兼食事処へ。


「また肉?」

「肉」

「ふとるぞ」

「美少女は太らないしトイレにも行かないんだぞ、知らないのか」

「知らねえ、おっさん!酒と肉適当に持ってきて!」

「だーれがおっさんだコノヤロウ、パンは付けるか?」

「いる?」

「いる」

「付けて!」

「あいよ!」


 注文を華麗に終え席に着く、ボロっちい木の椅子とテーブルだ。


「どーすっかなあほんとに、暇すぎて死にそうだ」

「いっそその限りないパワーで建国でもしたらどうだ?」


 おっ?


「……ちょっといいかもしれない」

「はは、マジかよ!いいねいいね、じゃあまずは何から始めるんだ?」

「そうだなあ……『地図具現』」


 ばさりと世界地図を呼び出す、何故か古臭い海賊の地図みたいなのが落ちてきた。


「うわっぷ、なんだこれ」

「世界地図」

「本当だ、よく見たら城にいた時こっそり盗み見たやつに似てるな」

「何してんだ、……なかなかいい土地がねーなー?」

「建国の為のか?ハハハ、じゃあここがいいぞ」

「どれどれ」


 指さされた所を見る、国と国の大陸を分けるように広がる海。そのど真ん中にぽつんと島があった。


「何この島」

 

 旅してる時には気付かなかった、ゲームの時も目に付かなかったしそもそもファストトラベルがない土地はそんな知らない。


「魔の島、別名暗黒島」


 ハンターハンターかな?


「詳しく」

「いいぞ、この島はな「あいよお待ちど!ピクシー酒にアヘー鳥の丸焼きな!あとパンを適当に持ってきたから」おおあんがとさん。それで島なんだが」

「カンパーイ!」

「最後まで聞けタコ、まあいいや。カンパーイ」


 ワイルドな木で出来たジョッキを呷る、爽やかな柑橘系の香りが鼻に抜け僅かに下に残る苦味。ふわりと頭を撫でるアルコールに気分上々ヘーイDJだ。


「うまいうまい」

「少し上品に食え」


 肉も美味い、パリッパリの皮に噛めば噛むほど油すっきり旨みどっしりなぷりっぷりの肉が口で踊る。これを酒で流し込めばもうここで一生暮らせる気持ちになっちゃう。


「グフー、でなんだっけ」

「んぐ、島の話だろ。まあ早い話めちゃくちゃ強い魔物がワンサと居るんだ、しかし島特有の鉱石やら植物やらが超希少で人の足は後を絶たず。訪れた人の骨も後を絶たないってな」

「むぐむぐ、広いの?」

「まあこの王国には及ばないが国ひとつなら楽勝な大きさだ、多分。もっとも人が住める環境では決してないがな」

「じゃあ俺が魔物消し飛ばして整地して人呼んで貴重な素材と鉱石売り飛ばしてそれを元手に建国アーンド家畜農業完備させたら?」

「攻めるには海しかない最強の盾、オマケにお前という最強の矛。貴重な素材は独占され地産地消も出来てるときた、パラダイスの完成だな」

「ほほーう」

「悪い顔してるぞ」


 ぐいと酒を進ませる、毒無効は切っているので体相応の酔いが回り段々と楽しくなってきた。


「んじゃあ明後日くらいから始めるか!お前も来いよ、公爵?いや宰相?よくわかんないけど2番目に偉い人にしてやるから」

「おおっ!いいなそれ!国の犬もおいしい地位だけど権力争いめんどくさくてな!ここらでいっぺん第2の人生歩んじゃおっかな!?」

「俺は王座にふんぞり返ってるだけだから政もろもろ全部よろしくな!」

「ガッハッハ!今より忙しくなっちまうっつーの!」

「お前ら少しは静かに呑んでくれよ……」

「おおお?なんだねヒゲのおっさん、我は王女ロネであるぞ!」

「そうだそうだ!控えおろう!こんな店王が手を振れば空の彼方に吹き飛ぶのだぞ!」

「貴様の髪の毛のようにな!」

「もうないっつーの!」

「あっ、こりゃまた失礼!」


 ガハハと2人で笑う、楽しくなってきやがったz『ガシ』


「オイ」

「「ハイ」」


 こわい、目が。


「ここは俺の店で俺が王だ、極刑に処されたくなければ出ていけ」

「「ハイ」」

「じゃあはいこれ、2人合わせて5万ポコだから」


 ポコとはこの世界の通貨である。


「ルック、頼んだ」

「ふざけんなよお前、俺は可愛い女の子には快く奢るがお前を女だとは出会ってナンパした時以来1度も思ったことが無い!「思ったんだ」思った。ってそうじゃなくてつまりお前に奢る義理は1ミリもないって訳だ、解るか?」

「……ぐすっ、わ、わたし。おいしいもの食べられるよって、ついてきたらこんな。ひっ……」

「おいおいあいつ女の子泣かせてるぜ……」

「しかもあの子街の人を助けてくれる魔法使いじゃんか、あんないい子を……」

「……でもそんないい子だっけ、俺この前馬の病気治してって言ったら豚に変化させられて『これで平気!ヤバイですね☆』って言われたぞ」

「かわいいからいいだろ」

「確かに」


 勝った。かわいいは正義なのだ。


「ぐっ、ずりいぞお前!死ね!」

「死ねはねえだろうが、少しはオブラートに包め。これだから息子にだけ皮包ませるのが得意な男は」

「は?包まれてないが?なんならお前で証明してやってもいいんだぞ」

「お前さっき女って見てねえって言ったろうが!死ね!」

「あっ!死ねって言った!いっけないんだ!せーんせー!」

 

 あっ。こいつ情けない奥義を、それを言われたら中途半端に悪いことが出来ない俺はイヤーな思い出がフラッシュバックしてすくみ上がることしか出来なく……


「出てけ」

「「はい」」



『バァン!!』

「うぎゃっ」

「いでっ!」

「じゃあな、お代は確かに頂いたぜ」


 放り出されてしまった。


「イテテ、結局俺が払うのかよ」

「女の子に払わせるなんてレディの扱いがなっていませんことよ」

「クソっ、酔いが覚めちまった。飲み直しだ」


 いつの間にか外は真っ暗だ、出てきた時は僅かに明るかったが。


「いいね!」

「次はお前が払えよ!」

「えー?いいじゃんほらほら胸腕に当ててやるからさ」

「やめろ!なんだかんだ言いつつ興奮してちょっと勃ちそうだからやめろ!」

「正直なヤツ」

「どんどん行くぞ!次はスライム酒がメインの店にしよう」

「おっ、いいね!あのドロッと感がたまんねーんだわ」

「ガーッハッハ!王様が通るぞう!」

「下にー下にってな!」

「なんじゃそりゃ!」


 ガハハと笑い夜は更けていく、引きこもりの毎日とは比べ物にならないくらい。楽しかった。







「そろそろ起きろほら」


 ぺちぺちとルックを叩く、もう昼間だと言うのにオンボロ宿屋でぐっすり寝ていた。


「ん、んん?なんだロネか…」

「モーニン」

「なんだそれ、なんでお前ここにいるんだ」

「例の島、とりあえず真ん中は更地にして魔物は一匹残らず駆逐しといたから見せよっかなって」

「は?」

「は?じゃないよタコ、建国するって言ったじゃんか。宰相の意見も聞かせろよ、こっから何すればいいかわかんないよ」

「は?」




「なんだここ……」

「いや昨日言ってた島だけど」


 惚けたルックを転移で道連れにして島へ、更地になった円の中心に2人で立つ。遠くに見える辺りは未だ森林だ。


「……まさか本当にやるつもりなのか?」

「ヒマだし、やるさ」

「ま、魔物は……」

「さっきも言ったじゃん、駆逐したって」

「死体は?」

「熱線で消し飛ばしたからないよ、グロいの嫌いだもん」

「この島の魔物の素材はどれも超希少の1級品だぞ?」

「えっ」

「バカだな……」

「や、言うてこの広い世界だしどこかにまだいたり……」

「いない」

「今からでも、蘇生を」

「できるのか?」


 できない。


「はっ、卵が残ってたり」

「もう遅い」

「なして」

「魔物は卵を産まない、環境の魔力で自然発生するからな。知らないのか」


 MMOのリポップはそういう仕組みだったんだーへー知らなかったー原作再現度たっかーい。


「植物と鉱石で資金繰り頑張ろう!」

「はあ……」


 盛大なため息をつかれた、なんやねーん!

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