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プロローグ

 ぼくは今何を見ている?ぼくは今誰を見ている? ぼくの目に映るのは崩壊していく世界。ぼくが傍観しているのはぼく自身。血塗れになりながら、真っ赤に染まった血溜まりの中を歩く。そして世界がぼくの手によって壊されていく。それを何度も何度も繰り返す。まるでそれは自ら暗闇に向かっているように、死に向かっているように映る。まるで死を望んでいるように、死に挑んでいるように映る。これが現実であっていいはずがない。こんなものをぼくは望んでいない。現実でなければ夢だ。どうしようもなくつまらない夢。どうしようもなく堪らない夢。嘘だらけの偽りだらけの夢を見ている。こんなものに何の意味がある。こんなものに何の意義がある。きっとぼくが見ているこの夢にも、ぼくが夢の中で行っている行動にすら、意味も意義もないのだろう。ただただ操り人形のように人を殺し、世界を壊していく。僕の意志なんてどこにもない。


  これは真実とは程遠い世界。

  これは幸福とは程遠い世界。

  これは優しさとは程遠い世界。

  これは正義とは程遠い世界。

  これは希望とは程遠い世界。

  これは愛とは程遠い世界。


 嘘だらけの不幸だらけの厳しさだらけの悪だらけの絶望だらけの憎しみだらけの世界。こんな人生、こんな世界、こんな運命は誰も望んでいない。一体何人の何十人の何百人の何千人のどれだけの人間が間違えばこんな世界が生まれるというのだろう。しかし、そんなことを考えても仕方がない。だってこれは夢なのだから。痛みもない、身勝手でちっぽけなただの夢。だから、心配しなくていい。この夢から醒めれば、この世界とは全く関係のない世界が広がっている。そこまで考えたところで世界が歪む。壊れかけていた世界が今度は歪む。これはきっとこの夢が終わるということだろう。やっと、くだらない夢から解放されるのだ。ぼくがそう思ったところで。


「私はあなたが好きよ」


  まるでそれはぼくが夢から醒めようとするのを待っていたかのように、見計っていたかのように、絶妙だった。さっきまで終わって欲しいと思っていた夢が終わらないで欲しいと思えるほどに、魅力的で魅惑的な声。ぼくの心を静かに優しく包み込むような愛の言葉。本当にずっと聞いていたいと思う。だけど、夢は終わる。長かったようで短かった夢が終わる。夢の中での意識が薄れていく。ぼくの心はこの夢によって傷ついた。それでも、あの声、あの言葉だけは現実のものであって欲しいとぼくはそう願った。



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