糸とんぼ【詩】
空が明かりを手放したころ
干しっぱなしの敷布をひきあげようと
そろと手をのばしたさきに
ちいさな美しい虫けらが腰かけていました
笹ぶねを裂いたひすい色の胴
むこうの配管の透ける翅
彼はわたしに背をむけ気付いてもいない
ひととおり見とれたあと
その、こおったような翅をつまんでみた
彼はすわった姿勢のまま、ぴくりとも動きませんでした
色をなくしていく空へ、
その針金細工みたいないきものを掲げ
おやゆびとひとさしゆびを開いたら
いっしゅん 緑の糸鋸で空をきりさき
すぐにとけてきえてった
背後で はやくおうちにいれてくれと
敷布がべそをかいて
いた