狡猾なもの
「よお、ヒーロー気取り。いや、今はなりぞこない勇者か。どっちにしてもダサいな。まあ今はそんなことを話しに来たんじゃない、なあ俺と手組まないか?」
友達に気軽に話しかけるように、でも俺のことをどこか嘲笑うような声で喋りかけてきた。
こいつの名前は、五十嵐 大輝俺の一番嫌いなやつだ。職業は、狩人だったはず。こいつは、あらゆることに秀でている。それに、顔も誠や大翔には負けるがいい方だ。しかし、こいつにはあまり人はよってこない。それは、その性格にある。ターゲットに決めたやつがいたら少しずついじめ始める。いじめといっても自分からやる訳じゃない。実行するのは、弱みを握られているもの、金に買収されたもの、自分がいじめの対象にならないようにするために実行するものたちだ。だから、こいつがやっているという証拠は、掴めない。仮に掴めたとしても周りにいるやつらが否定する。一人でこいつに挑めばひどい学校生活をおくることになるだろう。やったことがない罪を着せられたり、根も葉もない噂を流されたり、さらには信じてくれていた友達までいなくなる、そんな絶望に立たされる。
何でこんなに詳しく語れるかって、それは俺が実際に受けたからだ。一年の入学式に女子生徒を助けたときからが始まりだ。それから、何度も何度も同じことを繰り返した。最初は、ありがとう とお礼を言われていたが根も葉もない噂が流れはじめたときから言われなくなっていった。次第に何度か同じ生徒が標的にされた。もちろん俺は助けた。しかし、その生徒からは、 「君のせいで僕が標的にされた。ふざけるな。」と言われてしまった。その男子は生徒は、自主退学した。二学期の辺りから暴力が振るわれるようになった。俺が大人に相談しないことがわかったのだろう。実際、両親は年がら年中海外で仕事をしているし、俺を育ててくれた。父方の祖父母は、中学の時に死んでいる。母方の祖父母とは、両親があまり仲が良くないためほとんど行くことは、ない。遠方に住んでるということもあるが。ほぼ、一人で生活している。その周りには、大人はいない。近寄ってこない。噂があるから。
「俺がお前とは手を組まないことぐらい、わかっているだろう。」
「そうつれないこと言うなよ。力を合わせて何かをしようとしている訳じゃない。ただ俺のやることに手を出さないでほしい、そうしてくれたら俺はお前にも手を出さない。」
「お前側のメリットが少なすぎる、それにお前は、その契約を守らないかもしれないだろ。」
「それについては安心してほしい。俺は約束は守る男だからな。」
約束がなければ何でもするぞ。と言ってるようにしか聞こえないな。けれど何故こいつは、俺に執着する。今俺は、簡単に勝てるようなやつだ。何かをしでかす上では、そこら辺に転がってる石と変わらないはずだ。大翔や誠の方がよほど邪魔になりそうだが。
「お前と手を組む気はない。じゃあな。」
俺は、そう言って立ち去った。
昼食食べ逃した(泣)
やっぱりあいつは、許せない。
一方その頃
あいつは、俺に最後まで抗い続けた、それは初めてのことだ。思えば最初からあいつはヒーロー気取りだったな。桜井や聖沢みたいに力を持っていた訳じゃないのに。楽しい、楽しいぞ。
前は、聖沢に止められたからな。今度は、正面から潰すか。駒を動かすのもいいがそれでは、スリルがない。ここには、俺を止められるものは少ない。あいつが力を着け始めたぐらいに勝負を挑もう。そして、圧倒的な力でねじ伏せよう。あいつが立ち上がる度に、何度でも。大丈夫だ、こっちには切り札があるのだから。
五十嵐 大輝は次のゲームを考えていた。
午後からは魔法が得意なものはルイート副団長のもとで魔法を撃つ練習、物理攻撃が得意なものはアシル団長のもとで訓練。(弓矢などの武器もこちら)どちらもできるタイプの職業は今日はアシル団長の方ということになった。
ゲームでしかできなかったことが今現実でできる。光属性の魔法を覚えれば丸眼鏡の魔法使いみたいに、 エクスペルト○○ローナム が撃てるようになるのかな。でも、あれ守護霊を召喚するものだったから精霊魔法とかあるならそれに近いのかな。後で、ルイート副団長に聞いてみよう。
「勇者諸君まずは、攻撃魔法が使えるものはこっちに、治癒魔法や支援魔法を使えるものはあっちに、どちらも使えるものはその間に並んでくれ」
攻撃魔法とは言えるか微妙だが ストップ と治癒魔法が使えるから真ん中に並んだ。
どうやら両方使えるのは、俺一人のようだ。
「並んだな、これから魔法についての説明をする。魔法は、MPを消費して発動する。知力というのは買った魔法をより効率よく発動するためのものだ。発動する魔法の名前を言うと発動準備の時間になる。初級なら1秒ほどで魔法が放たれる。知力を上げればすぐに発動できるぞ。そして、魔法を使うとクールタイムに入る少しの間魔法が使えないから注意しろ。それと、強力な魔法ほどクールタイムは長くなる。知力を上げればクールタイムも短くなる。知力は、魔法を使うものなら上げておいて損はないものだ。魔法を使えば使うほどMPも知力も多くなる。これで説明は、終わりだ。それからユースケ君少し時間もらえるか?」
「はい、わかりました。」
「それでは、攻撃魔法の組はあの鋼の的に魔法を当てる練習。治癒支援魔法の組は少し待機していてくれ。」
みんなが訓練している広場の隅
「ユースケ君、時間魔法を見せてもらう事はできるかな」
「できますよ。でも初めて使うので成功するか分かりませんけど。何を的にすればいいですか?」
「じゃあこの草で」
足元に生えていた草を抜くとそれを差し出してきた。
「わかりました。 ストップ 」
どっと疲れが来た。草を見るとなにも変わってないように見えた。草を離すとストンと落ちていったが妙なのだ。握っていた時から葉っぱが元に戻ろうとしていない。少し待つと、ほんのりと光って葉っぱが元に戻り始めた。
「成功ですね。」
「ありがとうございました。時間魔法がどんなものか私はわからなかったので参考になります。」
「ルイート副団長は、時間魔法がどんなものかわかりますか?」
「ユースケ君には、申し訳ないのだがあまり人気がない。習得するのが難しくそれでいて成長スピードも遅い、一生を(下)で終えるかもしれないくらいに。なら、ちがう魔法の方が戦いが有利になる。そういったことであまり使う人がいません。非戦闘でも、対等と言われる空間魔法の方が転移やアイテムボックスなどがなるためそちらに人が流れます。」
な ん だ と
早く成長をしたいのに成長の遅い魔法かよ。しかも、不遇。世の中理不尽だな。知ってるけど。
ショックを受けていると
「まあ、ユースケ君の場合は治癒魔法もある。それに他の魔法を覚えればいいじゃないか。君はまだ若い何だってやれるさ。若いっていいなどうせ私なんか女騎士やってるせいで婚期を逃したおばさんだ。」
なんかルイート副団長、自分が言った言葉で泣きかけてるんだが、どうすればいいんだ。そうだ、昔の女性は16歳前後で結婚してたって聞いたことある。
「大丈夫ですよ。俺達の世界では24歳ぐらいで結婚するんです。」
「そうなのか、まだ私にもチャンスはあるのか。」
「はい、それに男勇者達はルイート副団長に魅了されてましたよ。」
「そうか、私に魅了されていたのか。ありがとうユースケ君。君のお陰で生きる活力がわいてきた。そういえば、治癒支援魔法の組を待たせていたな。ユースケ君、君もこっちに参加しなさい。」
「はい、わかりました。」
なんか ストップ 使ったときより疲れたんだが。
ルイート副団長と戻ると、男達からものすごく睨まれた。