0.6全身全霊
≪祐side≫
アルル『え...しろんさん...?』
しろん『早くカバーお願い、私が前に出る!』
俺のアバターしろんちゃんは、超強力な装備まとい、ゲーム内で有名な低確率エンカウントモンスター『アルザック・ザック』と対峙していた。
それは数分前…
しろん『アルルさん、一緒に今回のイベントクエスト行きませんか?』
アルル『俺で良ければ、ぜひお供させていただきますよ。』
俺は、ギルドに加入したばかりの新しいカモ【アルル】と一緒にイベントクエストを進めていた。
今回のイベントクエストは当たりで、装備に強力なアビリティを付与できるアイテムを獲得することができる。
イベント内容も案外簡単で、ダンジョン内のモンスターを倒し一定の材料を集めるものだ。
さらに、過去に登場した伝説のモンスター『アルザック・ザック』が低確率で出現すると非公式サイトで情報が!!
こいつの落とすアイテムは強力でハズレもない、しかも通常じゃほぼほぼエンカウントできないので、お目にかかるだけでも価値がある。
アルル『では俺が先頭を行くので後ろからついてきてください!』
しろん『はいわかりました、よろしくおねがいします♪』
正直今の装備だときついがアルルが居てくれれば、余裕だろ。
アルルを先頭にクエストがどんどんクリアされていく。
そして一度荷物整理をするためダンジョンを後に。
来た道を引き返していると、アルルがダンジョンの岩盤の隅に何かを見つけたようだ。
アルル『しろんさん、このスイッチは何でしょうか?』
しろん『確かに、見落としちゃいそうな場所にスイッチあるね』
アルル『押しても大丈夫でしょうか』
...スイッチ、こんな場所には無かったはず。
過去のイベントで、たまにダンジョンにイベント専用アイテムが配置されるから、目を配っていたはずなのに...。
しろん『即死とかはないと思うので...押してみましょうか。』
アルル『はいでは押しますね?』ポチ
キュインンンンンン
何かが作動するゲーム音と共に、違った場所へ、しろんとアルルがワープする。
四角い部屋のようで、中心にはあの伝説の『アイザック・ザック』が佇んでいた。
どうやら、アイザックはこちらには気づいてはいないようで、殴ると戦闘が開始されるみたいだ。
っていうか、エンカウント式じゃないのかよ。
きっとあのボタンだってランダムで出現するとかそんな感じ、ってかボタンを探すが難しいのか?
頭と現状の整理をしているとモニターから『グオオオオオオオ』っと聞こえる。
そうアルルが殴った、アルルが殴っていたのだ。
アルル『マップに配置されている岩裏に隠れてください!!』
しろん『え、え、1人で大丈夫なんですか?』
アルル『分かりません、ですが俺で無理ならしろんちゃんも死んでしまいます!』
しろん『では私も...』
アルル『しろんさんは、おが死んだろ回をうながいまし』
どうやらチャットどころではないようだ…。
このゲームではパーティの一人が生きてさえいれば復帰システムがある。
それをお願いしたいということだろう。
ってかアルルすでに死んでるー!
アイザック・ザックのHP全然削れてないー!
アルル『すいません死んでしまいました。』
しろん『大丈夫だいじょうぶ、復活すればいいんだから』
アルル『だめです、右上に表示に残機が表示されているみたいです』
しろん『今までそんなこと...』
アルル『今回特別仕様でしょうか...もう少し私が強ければ』
...残機1?
参加人数分の残機しかないってことか。
ああああああああああ。
今まで、我慢してきたのに...でも今回は仕方ないしかたなああい!
アルルの復帰を終え、ひとこと。
しろん『ちょっとの間、アイツを引き付けててください』
アルル『なにか策があるんですね...?わかりました』
しろん『それから絶対に死なないでください』
俺はコントローラを素早く動かしメニューバーから装備一覧を開く。
そう、ここには今まで貢いで貰った強力装備が封印されている。
だって中途半端なステータスのほうが絶対、アイテム貰えるし!?
ちょっと弱い女の子演じた方が、男も『ふっ守ってやるよ』みたいになるだろ、アルルみたいにさ!
くっそおおお『アルル』には口止めしとこ、あとコイツはもう釣れねぇな。
俺のしろんちゃんが超強力装備を身にまとい岩裏から出る。
もちろんステータスは現在ギルド一位、このゲームでも上位に食い込めるだろう。
アルル『え...しろんさん...?』
しろん『早くカバーお願い、私が前に出る!』
アルル『どういうことですか...!?』
その後はアイザック・ザックとの攻防が続き、30分後我々が勝利した。
俺はしろんの装備を、通常に戻しアルルの様子を伺うべく声をかける。
しろん『あのアルルさん...?』
しろん『おーいアルル...さん?』
返事はない屍のようだ。