0.3 心内にとどめた願い
≪真琴side≫
『まこちゃんは女の子が好きなんだって。』
『それって変だし気持ち悪いよね。』クスクス
『可愛いのに、勿体ないー。』
古い記憶のはずなのに、その言葉が脳裏に焼き付いて、私を悩ませる。
今でも昔の言葉が私に付きまとい、同性愛者という本性を隠し生きようと決めた。
今でも喉に小骨が刺さって取れない感じが続く。
いつか、このつっかえが取れるほどの、楽しさや、愛で押し流せる日は来るのだろうか。
そんなことを日々思いつつ、ゲームの世界へ逃避する。
可愛いアバターと、いや女の子とイチャイチャするために。
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【宇佐 真琴】は高校から帰るなり、【まじっく☆だいありー】を起動する。
大好きなウサギのぬいぐるみを抱き、昔のことをぼーっと考えていた。
ゲーム画面には、男性アバターの【アルル】がこちらを見て微笑んでいる。
青髪で瞳は赤、私の中での執事をイメージした顔出しをしている。私ながらイケメンなアバターだ。
私がネナベをしながら、このゲームをする理由には2つの訳がある。
■1つ目は、ただ単にアバターがかわいい。
可愛いアバターの女の子とチャットするだけで「むふふ...うへぇ」
■2つ目は、物凄い不純な理由になる。
同性愛者ということを、隠しながら、女の子と普通にお話しが可能!
リアルではできないことだってできる。
相手だって私を男だと思ってくれるから…。
みんなだって男のアバターが、中も男ですっていうとあまり疑わないでしょ?
だけど別に出会いを求めているわけではない、ゲーム内で疑似恋愛みたいなのができれば、少しだけでも心が満たされる。
ただ本当の女じゃなきゃ嫌!
最近は女性アバターを使う男多いし、ネカマだって多い!
まっ私の目を欺くことはできないと思うけど。
あっそういえばギルド招待きてたんだっけな...。
前のギルドで、いざこざがあって今フリーだし、どんなプレイヤーが確認してみようかな...。
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「ぐあへぁぺろぉぉぉ」バンバンバン
感情が抑えきれず、大好きなうさぎのぬいぐるみのお腹が陥没する。
今までに発音をしたことのない、音を発してしまった。
なに!なに?この【しろん】って子のアバター可愛すぎる...。
はぁこの人どんな話し方するのかな...おしとやかな感じ?実はちょっと荒っぽいとか?
凄い妄想が膨らむどっちにしろ、良い...すごくいい!!
見てるだけで幸せだ、ぜひこの子とお話ししたい。
気付けばギルドに加入して、正座でしろんちゃんの帰りを待つのであった。