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第八話

「本当は、真実をあきに話すのはまだ早いと思うし、どうかとも思うけど、面倒だから言っとくわ」


 明け透けな物言いに、付き合いの長さを感じた。


「随分、自分勝手な言い草だとは思うけど、俺も知らないの気持ち悪いから、その線で良いわ。教えてくれよ」


 ちょっと驚いたような、でもすぐにいつもの人を小馬鹿にしたような笑みに戻る。


「おー。聞いてショック死すんなよ」


「どんだけだよ」


 俺たちは、いつものように笑いあった。でも、話はこれからが本題だ。


あきはさ」


 話し始めたじんの口元を見て、緊張から唾を飲み込む。


「加護が与えられてないんだ。


……神様がバランス良く幸不幸、加護を魂に吹き込んでから、魂が手から離れるんだけど、あきの魂は不幸を吹き込んでる最中にてを滑らせて、人界へ落としちゃったんだよな。つまり、あきには幸せののイベントも、不幸に立ち向かうチャンスの加護も与えられないまま産まれ落ちたんだよ」


「……へー」


 俺は、言葉もない。


「一応言っておくと、神様からの伝言。『ごめんね』だって」


 追い打ちに、俺は目を開いたまま気を失った。



 俺が目を覚ますと、俺は再度寝心地の良いじんのベッドに横たわっていた。


 目に優しいベージュと空色の天井。心が休まる鳥の壁紙。じんの部屋なのに、この部屋は俺が好きなもので満たされている。


 考えてみれば、じんそのものが俺を心地良くさせてるんだ。


 特別優しい訳じゃない。ベタベタ優しくされるより、こうやって言いたいことが気兼ねなく言えて、言い過ぎても、言われ過ぎても、パンチ一発で仲が戻る。


 隣にいることが楽しくて、コイツが居なかったら、人生の半分以上つまんなくなるって本気で思ってた。


 だから、中学に上がって、バレンタインだの、花火大会だの、女子と絡みたくてウズウズしてる奴らの気持ち、分からないではなかったけど、じんといる方が楽しいに決まってるって、その時は思ってた。


 じんがモテてる事に気付くまでは。


 客観的に考えれば、当たり前の事なんだ。


 顔良し、頭良し、運動神経だって良い。モテる要素の塊だ。仕草だって、坊ちゃん育ちが全面に出てて品があるし、日の打ち所のない王子様だ。


 じんはもしかしたら、俺の理想の男なのかもしれない。


 高校に入って、新しい環境にも慣れてきた頃、その現実は俺の目の前に突き付けられた。


 掃除のゴミ捨てに行った時、いかにもな校舎裏でその光景は繰り広げられた。


 結構男子から人気の高い、俺も可愛いと思っていた女子が、顔を真っ赤にしてじんへ好きだと告白していた。


 俺は、反射的に物陰に隠れてしまった。二人も俺の存在には気付かなかったのかもしれない。


「で?」


 信じられな程、冷静な声で、じんは告白に対して、こう答えた。


「えっ」


 焦る女子の声が、ツラい。

 なんて酷い態度を取るんだ、お前は!


 その俺のツッコミを知る由もなく、じんの冷たい口調は続いた。


「その『好き』って言われて、俺、どうすればいいの? コイツ、俺の事好きなんだって認識してれば良いわけ?」


 んなワケねーだろーよ!

 当然、彼女も黙っていなかった。


「ち、違う! もし、じんくんが良いなら、付き合って欲しいって……思ってる……よ」


 勇気を出して話しているんだろう。一生懸命さが、隠れているこっちにも響いてくる。

 良いなぁ! こういうの! ほんと、女の子可愛い!


 でも、じんは何の感動も覚えていない様子で、ふーん、と言った後、


「で、付き合うって、何?」


 確実に、口の端が笑っているじんの顔が容易に想像できた。


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