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第四話

 じんの物怖じしないハッキリとした言い分が真実だと伝えてくる。


「マジか……じんくんは、すごいでちゅねー」


 ヤツの頭を撫でて、誤魔化そうとしたが、その手は振り払われ、じんは勢いよく立ち上がり、俺を押し倒した。


 え? なんで、この人こんな怒ってるの? え、殴られる?


 動揺する俺に馬乗りになる。正にマウントポジションだ。やばい。完璧にぼこられる感じ。でも、手を振り上げる素振りはない。ただ、俺を見下ろしている。


 まさか、あれ? じんって、そっちの人? 俺、犯されちゃったりすんの? この間、興味本位で女子に借りた男同士のエロ漫画みたいな展開になってしまうの? え? 俺、俺、オカマ掘られちゃったりするのー?


 声にならない悲鳴を上げるが、声にはなっていないので誰にも届く事は無い。

 無意識に、身体をずらして逃げようとするが、じんの腕が、がっちり両手をホールドしてくる。俺は恐怖のどん底で、声も出なけりゃ、動く事さえできなくなっていた。


 じんの力強い右腕が、俺の顎と掴み、抑え付けてくる。


 あ。終わった。俺のファーストキスの相手、じんなんだ。涙でそう。てか、出てきた。じんの顔がスローモーションに近付いてくる。


 あー。さようなら、俺の夢にまで見たロマンチックなファーストキス。


「まどろっこしいから、これ見ろ」


 じんは吐き捨てるように小さく呟くと、ヤツの額を俺の額にぶつけてきた。


 へ? おでこ? いや、これなに? 何がしたかった?


 パニックを起こす俺の頭の中に、なんだろうフィルムの様な長いものがじんの額から何本も湧き出で、自分の頭の中に吸い込まれていく。そのフィルムを追いかけるように俺の身体は幼児化し、過去に引きずり込まれていった。


 視界が開けると、俺はじんの家にいて、ぎゃんぎゃん泣いている。


「大丈夫だよ、あきくん。あきくんの髪はちゃんと真っ黒だよ」


 金髪の天使と見紛う美少年は、じんだ。

 大きく綺麗に磨かれた鏡に俺を映す。


 そうそう。この時も俺は姉貴達にかつがれ、泣いていたんだ。


 俺が朝、目を覚ましてリビングに入った途端、長女、紅子べにこが、


あき! あんたどうしたの!? 髪の毛真っ白だよ!」


 そして、次女の翠子みどりこが、


「本当だ! 大変! 病院で治るかな!? 


 二人は、ポロポロと涙を流し、


あき! 可哀相! もう外に出れないよ! そんな小さいのに白髪になっちゃったら、外で指さされて笑われちゃう。お母さんとお父さんに電話しなぎゃ。でも、どうしよう。あきが白髪になっちゃうなんて、引き取った子供が白髪になるなんて、お父さんとお母さんが近所の人から悪く言われちゃうかも」


 俺は、本当にヤバイと思った。その歳で言葉は知らなかったけれども、絶望とはこの時の事を言うのではないかと言うくらい、目の前が真っ暗になった。


 自分の本当の両親が蒸発したのか、俺が捨てられたのか教えられてはいないけど、俺を養子に迎え入れてくれた叔母夫婦は、普通に良い人達だったから、その人たちを笑い者にさせてしまう自分が恐怖だった。


 俺自身が居なくならなきゃいけない、と本気で思った。


 毎日、俺を両親に隠れた処で、小突いたり蹴ったりする意地悪な姉達が泣いているのも、信憑性を増しさせた。今思うと、俺が小さかったように姉達も小学生だったにも関わらず、なんという演技と周到なイジメなのか。


 俺は、慌てる姉達を見ながら、ぽろぽろ涙が落ちてくるのを感じていた。


 昨日、隣に引っ越してきて、たまたまお使いの帰りだった俺に声を掛けてきた、髪をキラキラ輝かせた男の子。友達になってね、と俺に言ってくれた子も、きっとぼくの頭を見たら気持ち悪いって言うんだろうな。

 折角、男の子の友達が出来たと思ってたのに。やっと姉さんたち以外の人と遊ぶことが出来るんだって、すごく嬉しかったのに。


 僕が結局、友達と遊ぶなんて許される事じゃなくて、僕は姉さんたちの言う事を聞いて、召使にされて生きていく運命なんだ。


 そう思うと、じっとしていることが出来ずに、僕はその金髪の子に会いに行くことにした。

 気持ち悪いって言われるかもしれないけど、でも、自分から会わなくなるのは嫌だった。最後になっちゃうかもしれないけど、会いたかった。 

少しずつ読んで下さっている方が増えて嬉しい限りです。でも、皆様のお目に留まるにはどうしたらいいんでしょうね? 投稿時間とか問題なのかしら?

内容以外になにか改善点があれば、教えてくださると大変ありがたいです。宜しくお願いいたします。

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