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第二話

 自分の血を見て、いや、人の血もなんだけど。とにかく、血を見て、我に返る男って多いと思う。

 俺をその中の一人だったんだろう。

 今、自分が下校途中だったのを思い出していた。

 なのに、俺の隣に立っているのは、親友じゃない。


 妄想だよな……。


 隣に立っているのは、本当は身長182センチの山田 じんという男だったはずだ。

 それが、跡形もなく消えていて、バスのどこを見ても見当たらない。リアルになった俺の理想の女子が、じんが独特に放つ居丈高な視線を俺に向けてきているだけ。


 これは、夢? まぼろし?


 茫然とする俺の耳に、バスの停車ブザーが響く。

 理想の女子が、冷たく小さく言い放つ。


「鼻血男、とりあえず降りるぞ」


 俺の返事が待たれる事は無く、力強く腕を掴まれ、俺はバスから引き摺り下ろされ、家の最寄りの停留所より二つ前の停留所に立ち尽くした。


 相変わらず、目の前には理想の女の子がまんじりとせずに立っている。彼女が俺をじっと見つめるから、俺も言葉もなく見つめてしまった。


 あ。なんか口元が緩んでいる気がする。

 そう自覚した瞬間、顔で凄まじい破裂音が炸裂した。まさにバチーン! と。

 脳が揺れるのを感じながら、更に劈く神の切れ味鋭い声が響く。


「目を覚ませ! 大馬鹿野郎!」


 殴られた衝撃と怒鳴り声で、脳がぐらぐらと揺れて正常に働かない。

 まともに考えられない頭を抱え、俺の意識は闇に沈んでいった。


 ぱちり。

 目を開くと、そこは穏やかな水色の空に、白い小鳥が飛んでいる。

 じんの部屋の天井だ。

 いつ来ても広く、綺麗なじんの部屋。

 空と小鳥の風景は、じんの部屋の壁紙だ。


 ……いつの間に、じんの部屋に来てたんだ?


 ……女の子、どこ行った?

 ってか、じんはどこ行った?


 横になっていたのは、この部屋のあるじのベッドで、寝心地の良い感触に、一瞬起きるのに躊躇いを感じたけど、そんな場合でもなくて、起き上がる。


 じんの両親は留守がちで、長い付き合いにも関わらず、数えるくらいしか顔を合わせたことは無い。じんの身の回りの世話は、30代くらいの女性、とはいえ初めて会った時から印象がまったく変わっていないので正しい年齢も伺い様がない「光子みつこさん」が任されている。その光子さんも必要最低限の時間しか、この家には居ないからじん一人で住んでいるようなものだった。じんが可哀相な境遇だと感じるより前に、俺はこの家の合鍵を渡されていて、実質、俺の別宅みたいなものだった。


 じんより先に学校から帰ってきて、この家のドアを開ける事もある。じんの部屋で、ゲームをしたり、本を読んだり、ゲームをしたり、勝手知ったる感じで昼寝したりもして過ごしたりもしてる。なのでこの部屋に一人でいる事も珍しい事ではないけど、今は、居て貰わなきゃ困る!


 頭、回ってるのか回ってないのか分からんし、あの理想の女子にももう一度会いたい。そして、お近づきに是非なりたい。是非とも、是非にも!


じん! じーん! じんくんってばー! 我が親愛なる友人よー!」


 居ないと思うと、馬鹿なセリフを大声で言ってみたり……

 その声が、バン! という乱暴な音にかき消された。と共に、さっきの理想の女子が、コーラとお菓子をトレイに乗せて部屋に入ってきた。


「馬鹿みたいに人の名前連呼してんじゃねーよ」


 愛らしい口でそんな汚い言葉遣い。うん。これはこれでギャップ萌え。


「君、じんの知り合いなの?」


 彼女は、ちらりとこちらを一瞥し、返事もなく珪藻土のコースターを並べて、グラスを置いた。


 そして、もう一度、俺の顔を見る。


 彼女は、はっきりとした音で、


 はあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ


 と、長い長い溜息をついた。

18禁の表現は先になりますが、どエロな話なので、18禁にせざるを得ない。。。お楽しみにして頂ければと思います。

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