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第十一話

「神様が、不幸のログを刻んでる最中に、うっかり落っことしたの俺なんだよね。だから、責任の半分は俺にあると思って。だから、お前の守護天使に志願したんだ」


 淡々とじんの口調に、俺もうっかり相槌を打ちそうになる、が。

 待て待て待て。


「お前、それ、半分じゃねーじゃねーか! お前の全責任だろうよ! 良く自分のミス棚に上げていけしゃあしゃあと喋れんな!?」


「落ち着け。そうとも言うんだけれども、俺が志願するのも相当の勇気が要ったんだから、ここはそこに着目して欲しい」


「都合の良い事言ってんじゃねえ!」


 俺はじんの頭を引っ叩いた。

 じんは、いつものやり取りと変わらない調子で、あははと軽く笑う。でも、直ぐに笑いを引っ込めて、胡坐に肘を付いた。


「でも、俺、もっと早くこの話する時が来るんだと思ってたよ。お前の清純さには脱帽だわ」


 ククッと噛み殺すようにじんは笑う。


「んだよ。それと、俺の清純さと何の関係があるんだよ?」


「俺、もっと早く女体化すると思ってたからさー」


「は?」


あきがもっと早く彼女が欲しいとか、恋愛したいとか、Hしたいとか思うと予定してたからさ、何年か前からヤキモキしてたんだよね」


 学年上位の成績者とは思えないような、ヘラヘラとアホな笑い方をじんは晒した。


「お前、ほんとキレイな顔してゲスい事言うよな」


「俺はそれ込みで守護天使に志願してんだから。だから、勇気も必要だった。だから、お前は俺のコト自由にして良いんだよ。同年代の女も良し、熟女でも良し、幼女はどうかと思うけど」


「ほんと……下衆な」


 じんのあまりにも事も無げな口調に、俺は言葉を失う。


「なんだよ? 嬉しくないのかよ? お前の理想とする女子と恋人に成れるのに?」


「元がお前なんて、気持ち悪いに決まってんだろ」


「じゃあ、子供の頃からの記憶、書き換えてやるよ。どうせ姿が変わったら、周りの人間の記憶も書き換えるんだし、ついでに変えちゃおうぜ?」


 ゲームのリセットボタンを押すように、じんの口調は気楽で、まるで簡単な事を説明しているようだ。


「お前……いい加減過ぎんだよ……そもそも、お前は嫌じゃないワケ?」


 じんは、俺の呆れ果てている言葉に、一瞬キョトンとして、


「いや、全然。全くなんの問題もない」


 今更、何を言ってるんだと言うような、俺より呆れた顔をして俺を見る。


「正直に言うと、俺が守護天使に志願したのは、責任感からじゃ全く無い!


 お前の魂の傍にずっと居たいと思ったからだよ」


 じんは、美味しいモノを目の前に置かれている様にうっとりと目を細めた。


「お前が俺を手放したく無くなればなくなる程、魂に俺は近づける。お前の魂と密に成れる。それが叶うなら、姿形の変化なんて、寧ろウェルカムだね!」


 言い切るじんの瞳は、欲望に満ち満ちていて、天使というより妖魔っぽい。下手をしたら、今にも喰われそうな勢いで、俺はひたすら慄いていた。




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